スカトロ注意!
――ああ、神様。いや、カミサマなんてそんなに信じてないけど。だけど、今はアンタにしか頼めねーんだ。
「っ、いでぇ…よぉっ」
たぶん、今朝冷たい牛乳をがぶ飲みしたのが悪かったんだと思う。腹がギュルギュル言って、冷や汗がにじむINトイレ。――こんな時は、嫌でも神様にでも頼りたくなる。もうお腹ゆるいのに牛乳がぶ飲みしたり、授業サボったりしないから。どうかこの腹痛を、どうにかして欲しい。
「う"ぅ…」
急いで駆け込んだ、授業中のトイレ。もともとサボってたけど、静まり返ったトイレは嫌でも自分を急かしてしまう。
休み時間まではまだ時間がある、だけどもし誰か入ってきたら――。そんな考えばかりが頭を巡る。
こんなの、臭いと音でバレてしまう。もしかしたら、誰かに言いふらされちまうかも。そんなの絶対イヤなのに。なるべく早く済まそうと思うのに、焦れば焦るほど心拍数だけが速くなるだけ。
古い和式便所に跨って、すがりつくように目の前にあった銀色のパイプを握り締めると、冷やされた水滴がじっとりとオレの手のひらを濡らしていく。それでも、火照った身体には心地よかった。――そして、どれくらいの時間が経っただろう。
「あ…」
で、るかも。
ギュルギュルってお腹鳴って、恥ずかしい音で大きなオナラが出た。肛門の周りがミチミチと拡がって、腹筋がヒクヒク引き攣ってる。
嬉しくなって必要以上のトイレットペーパーを手に巻き取る。やっとうんこが出るっつー解放感。だけど、それはあっけなく奪われた。
「…うんち、出そう?」
「なっ、でぇ…、おまえっ!?」
突然の声に驚いて振り返ると、そこには幼なじみの涼の姿。
いつものゆるゆるの薄いグレーのカーディガン着て、ほわほわの頭して。いつ見てもしまりのない顔してて、お前はどんな状況で見ても癒し系だなーとか笑ってたのに。この時ばかりは、恥ずかしさで死にそうになる。
「扉開いてたよ」
「うそぉ…っ」
どんだけオレ急いでたんだよ、アホじゃん!
そう思っても、見られてしまったという事実は変わらない。きっと顔は、恥ずかしさと痛みで赤くなったり青くなったりを繰り返してるに違いない。
いつから見てたのか知らないけど、辺りに漂った臭いとオレの尻から少しだけぶら下がってるうんこで涼にはもう分かってるんだろう。
だめ、なのに。もう、もう――
「っ、見、んなぁ…、ひっ!ああ"っ!!」
ブーッ、ブボボッ、ブピッ!
ゆるゆるのうんこ、止まんない。
「やだぁ…、ううっ、とまんなっ…い、んんんっ」
ブジュ、ブボボッ!!ニチュニチュニチュ…
見られたくないのに、ゆるゆるのうんこは止まることなくオレの尻から垂れ流される。吐きそうなくらいのヒドい臭い、ニチャニチャと放出されたうんこが便器にボトボトと途切れることなく落ちていく。
いやだ、こんなうんこ。こんな年になって幼なじみに見られながら下痢便垂れ流すなんて一生の恥だ。
「ふっ…、りょお、お願いだからぁ、あっち行って…、ぐすっ、見んなよぉ…」
腹が痛いのも、恥ずかしいのも、全部一緒になって涙が出てくる。もうだめだ、涼に幻滅された。こんな姿見て、引かない奴はいない。
そう思うのに、まだ腹の痛みは治まらない。また浅ましく肛門をヒクヒクさせてうんこひねり出そうとしてる姿も、たぶん涼には見られてる。
「ん"んっ…」
パイプを握っていた手のひらは、力み過ぎて真っ白になっている。再びパイプに手を伸ばそう、そう思った時だった。
「まだお腹いたい?」
ふと涼がオレの背中を労るように優しく撫でた。なんで?こんなオレにドン引きしないの?とか色々思うことはあったけれど、震えるオレの唇は正直で。
「ん"ん…、いたぁい…。痛いよ…」
「だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。オレがそばにいてあげる」
涼の声は優しい。後ろを振り返る勇気はないけど、そうやって撫でてもらうとまた涙出てくる。
「う"ぅ…、でも涼、きたねーから…」
「いいよ、まだ出し切れてないんでしょ?」
「やぁ…」
ああ、見られてる。ぽっかりと空いて、汚物に塗れたオレのお尻の穴が。動物みたいに人前で平気でぶっというんこひねり出そうとしてるとこ。なのに、なのにぃ…。
「だってここ、ヒクヒクしてるよ?」
「んああ"あ"っ!!でちゃう、でちゃうからぁっ!!!」
「いいよ、出して」
そうやって覆いかぶさられてお腹押されたら、ぜんぶっ、ぜんぶ出ちゃう…!!
「お゛ぉぁああんんっ!!あっ、でちゃ、出ちゃうッ!!や、でてるっ!!!あ゛ア゛ア゛ッ!!!!」
ブリブリブリッ、ブボッ!ブチュブチュゥーッ!!!
ジャーッ、ジョボボボボボボッ……
「……は、ふぅ、しょんべんもぉ…っ、あー…、あー…っ」
吐息混じりの熱い息吐いて、頭まっしろ。気付いたらうんこだけじゃなくて、ションベンも一緒に出てて、もうすっごい解放感に身体が震える。――なんか、クセになっちゃいそぉかも…。
それからぜんぶ出すもん出して、ぽっかり空いたお尻の穴は引き攣るように不規則にヒクついていた。もう自分のお尻も拭う気力もなくて解放感に浸っていると、涼がペーパーホルダーからカラカラと紙を巻き取ってオレのお尻を拭く。
「ん…ぁ、いいよぉ。じぶんで拭くし…」
「いいから。よくがんばりました」
「ありがと…、涼ちゃん。よぉく手ェ洗ってね」
「ん。大丈夫、消毒用アルコール持ってるし」
そう言われて振り返れば、涼の手には見覚えのあるものが。
「どこから持ってきたのそんなの…」
「昇降口に置いてあった」
ああ、やっぱり…。そんなことを思いながら、優しい涼に身を任せる。
「疲れた?」
「…ん」
そうしてトイレ出て、二人でしっかり手洗ってしっかり消毒する頃には、そろそろ授業が終わる時間。だけどマズイなぁと思いつつ、へろへろのオレの身体はまだ涼の温もりを求めていて。
「…ね、またこういうの付き合ってくれる?」
そう言って涼に寄りかかれば、頭を撫でられながら「……わるい子」と呟かれる。だけどオレはまた期待に、ぎゅっと涼を抱きしめた。――ああ、変な性癖ついちゃったなぁ。そんなことを思いながら。