Wアンカー 運休編 | ナノ





『ドクロッグいわなだれ!』

「あっ!デンチュラドクロッグにエレキボールをーー!」

『隙を与えるな!ニョロトノ冷凍ビームでデンチュラを攻撃!』

たたみかけるように指示を繰り出すジンにチャレンジャーは怯み一歩後ずさる。まるで怒鳴るかの様な威圧的な指示に少年はヒッ、と小さく悲鳴を零した。纏っていたジン空気が一変。制帽越しに少年を捉える瞳がギラギラし、少年に恐怖を与える。

流石のデンチュラも2体相手を同時に対応する事は出来ない。
波乗りの技をうけた影響かエレキボールを放つ動作がやけに遅いデンチュラ、麻痺状態のドクロッグより遅いのが目に見える。


ドクロッグのいわなだれがデンチュラとダブランにヒットする。ぐらりとぐらつくデンチュラが目を回す。
降り注いだ岩のあたり場所が悪かったのか、デンチュラが目を回しエレキボールが不発となる。
怯み状態となったデンチュラは攻撃が出来ない。
だけでは終わらない。弱点となる技をまともにうけ更に身動きが出来なくなった。僅かな瞬間。
ジンのポケモンは隙を与えない。

トレイン内を駆けていたニョロトノが飛び上がる。目を回すデンチュラへと冷凍ビームが真っ直ぐに伸びていく。いわなだれを受けていたダブランが鳴き声を上げるもデンチュラに届く訳が無く、真正面から攻撃を受けチャレンジャーの足元まで吹き飛ばされる。岩の雨が止んだ事を確認したダブランだが、浮遊する体が床へと落ち荒い息をあげる。

傷だらけの体に鞭を打ちデンチュラへと再び声をかけるダブラン。目を回していたデンチュラの意識がやっと戻り起き上がる。
一鳴きし、ダブランの隣へとスタンバイ。
ボロボロながらもお互いに声を掛け合い、倒れまいと気合いを入れ直す光景に
モニター越しの観客は歓声をあげた。

デンチュラとダブランと対峙するドクロッグとニョロトノ。

そして未だに微動だにしないジン。

チャレンジャーは息を飲み込み、目の前の四体を視界に捉える。


「ダブラン、みらいよちだよ!」

「!」

ダブランの体が一瞬だがピクリと震える。そして指示を出した少年を横目で見るも、早く!と催促する主人に再び前へと向き直る。

「デンチュラドクロッグにきりさく攻撃!」


デンチュラとダブランが同時に動き出す。重なるようにジンも指示を繰り出す。


『ニョロトノなみのり!ドクロッグ、ダブランにどくづき!』


素早く動いたデンチュラが先陣を切る。麻痺状態のドグロッグに鋭い爪が振り落とされた。体を守るように腕をあげたドグロッグだが、俊敏に動いていた体が機械のようにピクリと急停止。後を追うように小さな火花が宙を舞った。
麻痺だ。
ドグロッグが動けなくなる。ニョロトノがそれに気付きすぐさまフォローへと入るが、ニョロトノよりも素早く動くデンチュラに追いつく事はできなかった。
デンチュラのきりさく攻撃がドグロッグへと的中。体を守る事が出来ないドグロッグは急所を受け後方へと吹き飛ぶ。
フォロー出来なかったニョロトノは自身の視界に飛び込んできた相方を宙に跳ぶことで回避する。その空中で再びなみのりを放てば、目の前にいるデンチュラと背後にいるダブランを飲み込んだ。

真正面から激流を浴びたデンチュラも体を守る事が出来ず急所にあたる。偶々デンチュラが壁になっていた事もあったのかダブランにはそれほどダメージはない。青ざめた顔をあげたダブランが目を閉じ一鳴きする。ダブランの周囲がぐにゃりと歪むもそれは一瞬で、まばたきした次の瞬間には何も変わらないバトルフィールドが広がる。

吹っ飛ばされたドグロッグが起き上がる。ニョロトノのなみのり、トレイン内に降り注ぐ雨に持ち物のアイテム効果により体力を回復。しかし急所に当たったのが痛い。
傷は完治出来てないのが見て分かる。

同時にダブランの体がふらつく。
ゼェゼェと荒い息を上げ車内へと零れた息は黒が混じる紫色。どくどくの追加ダメージにダブランは弱々しく鳴いた。

それを真正面から眺めていたジンがチャレンジャーの姿へと視点を切り替える。少年はダブランに目を配る様子はない。

どうみても今の現状はジンが優勢。さて、この状態から少年はどう大逆転をするか?
バトルを見つめるトレーナー達の注目を集める。

その最中、チャレンジャーがにかりと笑みを浮かべる。


「僕達のコンビネーション技見せつけてあげる!」


ビシリとジンを指差したチャレンジャーに、鍔の奥でピクリと揺れる。
ニョロトノとドグロッグへと指示を出そうとしたジンだが、ある言葉によりそれは打ち消された。


「ダブラン大爆発!」


その指示に驚いたのはジンとダブラン。

まずいと手を打とうしたジンだが、チャレンジャーのポケモンであるダブランの表情を見て動きが止まる。

指示を出されたダブランの瞳には光がなかった。
ドロリドロリと黒い渦が巻き、負の感情がこぼれ落ちていく。

わかっていた。

そんな感情が見て取れる。

目の前のダブランに思考が全て奪われていき、指示が出せなかった。

目をゆっくりと閉じたダブランの体は瞬く間に光り輝き、トレイン内を白へと塗りつぶすのだった。





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