初代ギアステーション駅長。そして初代サブウェイマスター。ある二人のトレーナーの出会いによって生まれた地位。
無類の電車好きであり同時にポケモンバトルのセンスも持ち合わせて居た。しかし、将来的に考えればポケモントレーナーと電車好きを生かした職業のどちらかに付かなければならない。2つに一つ。どちらを取るか?彼は考えた。どちらも大好きであり、手をつけたいと……。ならばどうする?
簡単だ。
二つをごちゃ混ぜにしてしまえばいいのだと。
しかし、自分の理想を理解してくれる存在は何処にも居らず、ただただ彼の理想に無理だと周りは理想を突き放す。
だが、ある日バトルを交わしたその2人。握手を交わし、良いバトルが出来た。またバトルをしよう。今バッチは何個目だい?この後一緒にトレーニングしないかい?出身地は?交わされる言葉と共に2人のトレーナーの中は深まった。再会しバトルをし、互いに相手をよきライバルと認め、より深まったその時にふと出た話題。
「移動?電車が好きだからずっとそれに乗ってる」
こぼれ落ちた雫は小さな波紋から、そして大きな波へと変わった瞬間だった。此処から理想を抱いていた2人の思いは現実へ生まれ変わる。
バトルが好きで
電車も好きで
でもどちらも欠ける事なく抱えていたい。
そんな2人の思いは小さなバトル施設から始まり、今やイッシュ地方では有名な会社へと成長していた。
初めは己達の趣味で始めた施設だった。
スリルなバトルを求める廃人達の口コミで広まった最初は、「メトロ列車」と言う何とも味気ない名前だったのを知る人物は少ない。
今は使われていない地下に埋まったままの地下鉄。小さな円を描き環状線と呼ばれる線路をぐるぐる周り、勝者にはそのまま乗車を敗者には下車を…フラットで何より某バトルフロンティアやタワーなどと言った面倒くさいルールは無い。勝つか負けるか?廃人達はシンプルすぎるバトル施設に心を奪われ次々と集まってきた。
いつの日かだろうか?小さな施設がポケモン協会公認のバトル施設へと変わったのは?
気がついたら其処は大手トレイン会社ギアステーションと呼ばれバトルサブウェイと有名になったのは。そして、その創設者である彼等はいつの間にかサブウェイマスターと呼ばれる様になったのは……。
サブウェイマスター。
ギアステーションのトップであり、誰よりも抜けたバトルセンスを持ち合わせる。
しかし、サブウェイマスターを長く続ける事は難しい。早くて三年長くても八年間しかその職務に付けない。何故そう言われているのか?
彼等はイッシュ地方を巡る電車の管理と共に、バトルサブウェイの管理も行って居る。交通機関の安全とポケモンバトル。
此処まで言っても流石に分からないだろう。
イッシュを駆け巡るトレインの管轄を行って居るギアステーション。其処には様々な人々が集まる。会社へ出勤する人。スクールに通う子供達。各地を旅するポケモントレーナー。数えても数え切れない人々が一気に集うのだ。同時に、己の人生に嫌気が差した人間も。
次にバトルサブウェイ。これは、動くトレイン内にて行われる変わったポケモンバトル。狭い車内にてどれだけポケモン達の能力を生かし、勝ち続けれるのか?
シングル、ダブル。これは両方に言える事。
しかしよく考えて欲しい。トレインは動き続け車内の狭さは変わらないのだ。其処でポケモンバトルを行って居る。普通のバトルフィールドではポケモンとトレーナーの距離が離れており、ポケモンが放った技はトレーナーへと届かない様に設計されている。勿論、トレイン内も同様に作られているのだ。しかし、ポケモンの放つ技や組み合わせによって車内は荒れ果てる時だってある。
此処まで言えばわかるだろう。
自殺する為に走るトレインに飛び込む自殺願望者。ポケモンバトルの最中で負う傷。それらは全て、ステーション内に居る駅員、サブウェイマスターへと影響を及ぼす。落ちた自殺願望者を引き上げる作業、バトルにて避けきれなかった技を受けたりと様々。
もしお客様に何かしらトラブルや怪我を負わせてしまったら責任者であるサブウェイマスターと駅長がそれを果たさなければならない。
中にはバトルで負った傷が深く、職場復帰出来なくなった者までも居る。
危険でありその責務を誰よりも果たさねば行けない。
相棒が欠けた空席を己が埋め、補い、そしてカバーしなくてはいけない。
だが、所詮駅長やサブウェイマスターとて人間。
事故やポケモンバトルの技に巻き込まれたりと、互いがいつ欠けても可笑しくなかった。
それでも、サブウェイマスターをそして駅長を目指す者は数多い。
いつかきっと、必ずサブウェイマスターになる。叉は駅長を目指す。
ギアステーションの面接を受ける若きトレーナー達の夢であった。
一人を抜かして。
了
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