「それは、両親か?」
『いえ、僕の姉です』
「……………どんな姉だ?」
気になっただけだった。
素朴な疑問。だから聞いただけだ。
なのに、何故か亮の雰囲気が一変した事に文次郎は驚いた。
深く負を漂わせる雰囲気では無い。
一気に花を咲かせ、まるで春を連想させる雰囲気を亮から放たれたのだ。
『とても綺麗な姉です!』
髪の毛はサラサラで、背が高くスラリとした体系です!
気立ても良く色白の美人ですよ!それにとても優秀で、凄く優しいのです!
まるで自分の事の様にフフン、と胸を張り出した亮に文次郎は目をパチクリさせた。
先ほどまでの異常な雰囲気はどこへやら。まるで何も無かったかの様に空気を一変させた亮に、文次郎は違う意味で頭を悩ませた。
それと共に一体何なんだコイツは!
変な不安を抱く。
ニコニコと嬉しそうに笑みを浮かべ、花を咲かせる亮に文次郎は困惑する。先ほどとの温度差が酷いものだ。
そんなにまで自慢なのだろうか?いきなり無言になった彼に、亮はまたもや首を傾げる。
文次郎の唇が静かに動き出すも、何かを紡ごうとした所で閉じてしまう。
そして首を小さく振っては、そうか。としか答えなかった。
「……自慢の姉なんだな」
亮の気迫に勢いにたじろぎながらも視線をそらさず、亮はニコリとまた笑った。
『ええ、自慢の姉です』
冬の季節は終わった筈なのに、未だに寒気が抜けない。
何故だろうか?
笑みを浮かべる亮から視線を外さない文次郎の後ろで、何かが揺らぎ刹那に消えてゆく様を見届ける亮を彼は知らない。
了
111201
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現42-総55
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