謳えない鹿3 | ナノ



「巻き込んでの破壊何だよ亮君」

『巻き込んで?』


何を巻き込んでなのか?顔を上げた亮の視線の先には、まぁな。と歯切れの悪そうな表情を浮かべる用具委員長。

「小平太のバレーボールで開いた穴や、文次郎の奴が額打ちつけた時のひび割れ、仙蔵の焙烙火矢での焦げ後等。勿論六年生だけじゃない生物委員会で飼育していた毒虫達の被害から出来た壁の穴や作法委員会の仕掛けで生まれた落とし穴まである」


9割り近くが忍たまが関わって出来た壊れた箇所。そして逸れを直して行くのが用具委員会。と言う訳らしい。
つまり、自主的意識では無く不可抗力、間違え、つい遣ってしまった。と言う意味なのだ。
決して不満等と自己感情を押さえきれず当たり散らすでは無い。
そう説明されて亮はそうでしたか、と頷いた。
間違いな方向の勘違い。どうやらそれだけは阻止出来たみたい。留三郎は安堵しては続ける。


「他にも実技で使う忍具の在庫確認や点検も行って居る。
見ての通り一年生坊主が3人と先輩の三年生がたった1人、そして俺を含んで用具委員会メンバーは5人。この5人だけで学園内の至る所を補修補強修理をしている」

『全てを1日に?』

「否、流石に下級生が4人では無理だ。一カ所を重点的に遣ったりと、その日によって活動内容は変わる」

すると、制服を掴んでいた平太がギュッと亮の腕へとしがみついて来た。どうしたのか?亮が下坂部さん?と顔を覗けば少年は指先に力を込めた。


「先輩が…用具委員会に入ったら、委員会活動……スムーズに進むと思います」

『!』


その言葉を聞いた同学年喜三太としんべヱはそうですよ!と身を乗り出した。


「亮先輩ってまだ委員会に入って居ないんですよね?!」

「だったら用具委員会に入りましょうよ!」

「食満先輩と富松先輩優しいです。…委員会終わったら飴をいっぱいくれるんですよ」


右から左へ逆に左から右へと誘ってくる可愛らしい一年生の台詞に、亮はヒクリと口元を引きつる。
どうしようかと、視線をさ迷っていると作兵衛と眼が合い、彼はびくっと肩を揺らした。だが、彼は俺も入って貰えると助かります!等と、拳を作って迄言うのだから、逃げ道が無いも同然だった。


《随時と、後輩に慕われて居るな》



パチンと小さな音が鳴った。同時に聞こえてきたのは言葉であり、それが矢羽根で誰が送ってきたのかを知った亮は返す様にため息を吐いた。


<<御冗談を>>

《冗談じゃないさ。実際こう遣って懐かれているんだ。悪い気はしないだろ?》

<<そうでしょうか?>>

《そうだろう。悪い奴だったらこう迄も懐く事はしない。特に平太が》


何故、この少年なのか?またもや新たな疑問が生まれる。
自身は其処まで……。








パチリと瞬きをする。気持ちを切り替えるかの様に再び息を吸っては吐き、フルリと首を振る。


<<今だけですよ先輩>>

《そうか?》

<<そうです>>

《今はそう思うかも知れないが、その内きっと分かるさ》


さてと!

プツンと途切れた矢羽根。その次にはパンパンと手を叩いた食満が居り皆の注目を集めた。



「お前達話は其処迄。委員会所属の件は亮自身が決める事だ」


彼がそう言うと4人はシュンとうなだれてしまい、途端に静かになってしまう。だが、其処は最上級生食満留三郎、下級生の扱いを知り尽くしている彼は口元を綻ばせては言う。


「だが、亮に用具委員会の良い所をしっかりとアピールしろよ?用具委員会には五年生が居ないんだからな?」


ニッと笑う留三郎にうなだれていた4人がパッと顔を上げた。

そして再び彼は亮へと矢羽根を飛ばした。














《俺も亮なら歓迎するしな》
















110412

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