長編置き場 | ナノ


いつも通り木の実を沢山買えた僕は籠いっぱいにゆれるそれに、口元を綻ばせながら相棒のデンチュラといつもの森を抜けていた。
今晩の食事当番はノボリ。ノボリは僕よりもご飯作るの上手いから、僕とデンチュラそれからノボリの相棒シャンデラはペロリと平らげちゃう。昨日は僕が食事当番で木の実と野菜炒めを作ったから、今日辺りこってり系の料理だと予想。多分スープか何かだと思うんだよね。
ノボリ特製の木の実スープは栄養豊富でめちゃくちゃ美味しい。お店が開けちゃうんじゃないかって思う位にオススメ!

ふと、目の前を一匹のミネズミが通り過ぎた。
無意識に発動した僕の特性ふくがん。ミネズミが隠し持っている物が見えた。
あ、あのこ小さな花を持ってる。誰か好きな子に送るのかな?

僕に気付いたミネズミがなんだい?と立ち止まるも、僕はなんでもないよ?バイバイ。と黄色い体毛に覆われた右手を振る。

背中にしがみついていたデンチュラが頭へとのしかかる。
分かってる分かってる。早く家に帰りたいんだよね?
ノボリのご飯たのしみだね。

早くこの木の実届けなきゃと再び歩き出そうとした時だ。
頭の上に乗っているデンチュラが、キュルルと鳴く。
え?誰かいるって?
デンチュラが示す方向へと息を潜めて進めば、林から抜けた野原が広がる。
野原一面に広がる鮮やかな花の数々。なに?花が欲しいの?でも、ノボリが販売用に育ててる花があるよ?
言いかけた時だった。

小さな影が花の中から顔をのぞかせる。何だろうキレイハナか何かかな?こんなに沢山の花が有るんだ。草タイプの子が居ても不思議じゃな……

「あれ?」

沢山の花の中から顔を覗かせたそれは草タイプのそれではない。茶色の頭。草タイプの子じゃない。
あれは…フード?


フードをかぶったその子はキョロキョロと周りを見渡す。あの様子からして僕とデンチュラの存在には気がついていない。一瞬シキジカかと思ったけど、角がない。シキジカの同種人にしても角らしきものが見当たらない。あ、でも、フードの頭部分。2つだけちょこんと尖っている。多分あれ耳だよね?

フードをかぶるその子は沢山の花を近くに置いていた籠の中へと詰め込む。
急いで詰めてるように見えるのは気のせいかな?

と言うより、あんな小さな子この辺りに居たかな?
この辺りの森は凶悪なポケモンが住んでいるから、同種人は近寄らない事で有名何だけどな…。


「!」

誰かがきた。

向こうの林から現れたのは一匹のポケモン。
ゾロアークだ。あの小さな子も珍しいけど、こんな深い森の中にゾロアークもまた珍しい。

ゾロアークがあの子に近づけば、その子は籠を持ったままゾロアークに抱きついた。

ゾロアークはその子を抱え、来たばかりの森の中へと戻っていく。

ゾロアークと多分同種人かな?
あの様子だと親子かな?街からワザワザこの森の中に遊びにきたとか?

小さな子とゾロアーク。一人と一匹が森へと消えて行く姿を、僕とデンチュラは静かに見送った。















130321


一覧/浮上/top
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -