神喰 | ナノ
消失した痕など残さないくらいに


リンドウさんがいなくなった。
いや、正確には

死んだ


あの日、私がまだ新人と呼ばれていた頃の話。
いつものようにミッションを終わらせて帰る途中だった。
しかしプリティヴィ・マータの群れに遭遇した。
あの時はアリサが鬱でリンドウさんに銃口を向けなかったものの
誤射、リンドウさんとアラガミ1匹を閉じ込める形になってしまった。
結局私達の力では如何にもならない数から
リンドウさんを置いて退散した。
それがリンドウさんの命令だった事もある。

もし、リンドウさん直々の命令じゃ無かったのなら命令に背き
あの場にいた私を入れた4人は今この世にいなかっただろう。
それから全てが曖昧のまま闇へと葬り去られたリンドウさんの死。
私は死と認めたくは無い。
だから消失、そう思っていたい。

今は新しいアラガミが沢山出現している事や
リンドウさんの件から1年以上も経ってしまった事から
その件を口に出す者や捜索を続けている者はいなくなってしまった。
でも私はどうしても忘れられなかった。
どんなに忙しくてもどんなに困難な時でも。
逆にリンドウさんを思い出すだけだった。
今私がいるのはリンドウさんを思い
リンドウさんだったらなんて言うのだろうか?と考えてきた末の結果だ。

ふとした拍子に
一人が消失して悲しむのなら自分も消失して
二人ともフェンリルにはいなかった事にする、そんな安易な考えを持った。
私は行動を夜中に起こした。
部屋をこっそりを抜ける。
ゆっくりとゲートへ向かう。
ゲートの前で静かに呟いた。


さようなら、みんな。


そしてリンドウさんと最後に言葉を交わした場所へ行ったのだった。


次の日の朝、美華沙が居なくなった事で
フェンリルが大騒ぎになったのは言うまでも無い。

しかし、それも数年経てば忘れ去られるのだろう――――。


消失した痕など残さないくらいに

END
Thx 4m.a
リンドウさんの切ない系書きやすいんですよ。内容ほぼ一緒だけど。

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