尾浜勘右衛門は随分変わっていた。
 豆腐には何もかけないで食べるし、髪の毛はよくわからない感触をしているし、あとはそれよりもわからない表情をよく浮かべている。笑顔のような、そうでないようなのを。三郎が気味が悪いと言っていたが変装しっぱなしのお前が言ってもなんだかなあ、と思ったのが真新しい記憶だ。今日は姿を見ないなあ。と食堂に足を運んだら勘右衛門はそこにいた。下級生もいるけれど会話しなくてもいい位置で、真剣に炊き込み御飯を具材と御飯に分けている。意味がわからなかった。

「何してんだよ勘ちゃん」

「見ての通りだ…」

「だからそれをやってる意味を聞いてるんだけど」

「具は具、御飯は御飯で食べたくなったから」

 そのまんまだ。食膳を貰ってその前の席を陣取るが、勘右衛門は何も言わない。まだ分けてる最中だから、というのは理由にならない気がするけれど、ととりあえず箸を揃えていただきます、と囁いた。炊き込み御飯とすまし汁、それに焼き鮭と煮物と漬け物が付いたテンプレート。持参している豆腐も小皿に乗せて貰っている。
 豆腐大好きだね。当たり前だろ。俺はあんまり好きじゃないけど、食べやすいよね。

「なんか複雑…」

「そうでもないよ」

 おーわりっ、と分別が完了した勘右衛門がにこにことごはんを口に運ぶ。具も、肉も、どんどんなくなっていく。早食いと言ったら美味しいからと返ってきて話しが終わってしまった。会話が短いけど、嫌いじゃない。でもどこかに感じる違和感。なんだろう。嫌に空気が冷めていくのがわかる。なんでだろう。急き込む。間違い探しのような気持ちになる。勘右衛門が最後の一口を口に入れてどうしたんだとでも言いたげにまばたきをした。それを見て、一瞬だけわかったようなわからなかったような気持ちの悪さに吐き気がした。自分の食膳が目に映る。






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