(割り切れないといった君の表情がほにゃららにほにゃるさまといったら!なんとかなってしまいそうだ!)

 僕は君が好きだよ。一番。上っ面の僕を見た人はみんなかっこいいだかなんだかで騒ぐ。それみたいなものだと思うから僕は人類みな平等をモットーにいままで生きてきた。だから一番とは唯一というわけではなく、結果としてのことであり、世界で一番誰よりも等と言う馬鹿げた答えではない。博愛主義。それだけ。みんなに甘くみんなに同じく。人は僕をタラシと呼ぶ。
 それをきちんと言ってから、僕は彼の顔色を窺う。それは怒っているとも悲しんでいるとも取れる複雑な感情を映していた。そんなに必死になって、何がしたいんだろう。何を思ってるんだろう。色々な事が頭の中を埋めたけど、僕には疑問しか残らない。その反応はなぜ。僕が思うことはどれ。君が思うことはなに。わかるはずも、なかったけれど。

「つまり、お前は俺のこと好きじゃないわけだ?」

「ううん。好きだよ、大好き。愛してる」

「…じゃあ、今通り過ぎた一年生のことは?」

「もちろん愛してるけど」

 、と彼は顔を伏せる。割り切れないといった君の表情が悲痛に歪むさまといったら。笑ってしまいそうだ。彼の喉が鳴って、少し震えた口を開く。聞きたくない。でも。ほら、僕は君をあいしているから、聞いてあげる。
 嫌なんだ、お前が、俺以外を見てるのが。はあ?って口から出そうになったけど僕は何も言わない。言えやしないのだ。というかお前の意見なんて聞いてないから勝手に言われても困る。で、何?君は僕の人権無視なわけ?それで?結局何?結論を言いなさい。

「僕はね、特別だとかが大嫌いだ。だから均等に愛していきたいわけ。みんなが偽物なんじゃなくてね、全部本物なの。わかる?平等に愛したいんだって言ってるのが、わかんない?」

「…わかんないな残念ながら」

「何で」

「だって、俺は愛されたい」

 こんがらがっていますと宣言しているような笑顔で俺の襟首を掴む。力の入れ方を熟知している彼に敵うわけもなく、そのまま手繰り寄せられ不器用に抱きしめられた。肋が折れない程度に入れられた力は、彼と僕のすき間をなくす。ひとことはすき間を埋める。すかすかだったこころをぎゅうぎゅうに押し込める。(愛されたい。愛したい。必要としたい。されたい。かっこいいとか、髪結いの腕が良いだとか、そんなちっぽけでくだらないことじゃなくて、ただ)(おれをもとめてほしくて。)所詮俺は嫌われたくなかっただけで。一番依存して突き放されるのが怖かっただけ。ぐるぐるになった俺を、僕を、落ち着けるかのように触れた指先は、やさしくて泣きそうになった。誰にもあげないと決めた筈の感情が、劣情が、愛情が。博愛が。崩れ落ちる。砂になってなだれ込む。割り切れないといった君の表情が歓喜に溢れるさまといったら!泣いてしまいそうだ!






100319/博愛主義
髪結いさんに恋してる

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