がが、と、鳴っている音楽より衝突音が凄い。画面を見ればカラフルな塊が落ちては消え、手元を見れば自分より小さい手が、黙らせるかのようにうなっていた。のろのろ動きそうな綾部からは想像がつかないくらいの勢いだったので、というか人間的に不可能な速さではないのかこれ。

「…」

「見えてんのか?」

「…、まあ。」

 なんとなーく、見えていますよ。そう言いつつ画面から目を離さない綾部に邪魔しちゃったなと反省した。あとでお詫びに百円あげようと一人ごちて隣に並ぶ両替機にしわのついた千円を入れる。じゃらじゃらうるさかったから多分これも邪魔だと思いやっぱりなんか奢ろうと決めた。気が利かないなあ俺。

 まだきちんと話したことがあるのかどうか怪しいこいつと俺は、ぶらぶらと遊び回ることがちょくちょくあった。会話という会話はないものの、無表情の綾部がこうやってゲームをやったりクレープを食べたりアイスを食べたり食べたり食べたり(細い体のくせして俺の数倍食うものだから始めは驚いた。)するのは少し面白い。嫌いなもの食べる時の表情とか、上手くいかなかった時の感情を見極められるようにもなる。純粋にかわいい。それくらい沢山遊んでいると言って良い。時々聞く少しだけかすれた声が好きだと思えるくらいには、綾部の一番になれたらいいなと考えるくらいに俺のこころは成長していた。すき。愛してるでも過言ではない。

「終わりましたよ」

「おう」

 綾部の気持ちはまるっきりわからないが俺はこの現状に満足していた。綾部の周りに俺より親しい人なんて(多分きっと)いないし。俺は存外プラトニックだったりする。
 「じゃあどっか店に入ろう」「…先輩、また奢るつもりでしょう。私自分で出しますからね」。出させる気は特にない。少し不機嫌な綾部もそれはそれで。カラオケ行く?と尋ねても返事がないのでドーナツ食べる?と頭を撫でるとこちらを睨みながら超食べますからねと言い俺の手を、え、えええ。綾部が俺に触れてる!?うそ!?
 綾部がドーナツの名前を頭の中に羅列させる。人より物覚えが若干良い俺はそれを逃さず聞いて頭の片隅に残したが、左手に触れる綾部のさらりとした冷たい温度に心臓は焦るのみだった。






100217/続・意味はないけど

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