※オタクで腐男子



 がたがたにならないように、はみ出さないように、失敗しないようにを前提に素早くペンを入れていく。印刷所に送るものはもう送ってあるから後はこのコピー本とペーパーなのだけれど、あと二十六分の二十四という、まあ死亡フラグである。オワタ。かれこれ五時間は隣でちまちまとトーンをやっている先輩をそろそろ休ませなければと立ち上がった。アーサーみたいに紅茶を煎れるのが上手いわけではないが、まあ下手ではないので我慢して下さい。

「何処行くの」

「紅茶でも、と」

「紅茶よりみそラーメンが食べたいよ」

「ご飯も食べてませんでしたか」

「みそラーメン。いちらくのみそラーメン」

「二次元に行ってください」

 鬼、悪魔!と喚く先輩にあくまで綾部ですから、と言えばううと唸って机に伏せる。ゲームでもやったらどうですか新しく買ってきたあれ。あれはまだやらないまだ。なんでしたっけ。…ファイナルファンタジー]V。ああ、納得。紅茶ととりあえずあった和菓子を机に置いてプレステ2を起動する。気分転換にゲームでもやればいいんですよ俄然やる気出るんでやってくださいと半ば強制したら渋々先輩がコントローラーを握った。涼宮ハルヒの戸惑.hack//ペルソナ4スカイガンナーエトセトラ。数ある中から先輩が選んだのは(キングダムハーツとファイナルファンタジー]で迷った末)ファイナルファンタジー]だった。迷う事なくラスボス手前のセーブデータを選ぶところを見る限り、エンディングだけ見るつもりらしい。それなら]2の方が見たかった。

「なあ」

「はい」

「原稿とか早く終わったらさ」

「はい」

「あの」

「…」

「その…」

「早く言え」

「ごめんなさい!」

 何なんですか、結局。…デートとかしたいなあなんて思うわけでして。カチッとメモリーカードが嵌まる音がやけに大きく聞こえた。デエト。オタクで腐男子な私達がデートしてもただのオフ会になってしまいますよ。久々知先輩は困ったように笑ってからその辺は心の問題だからカバー可能、と画面から目を離さずに言う。長いボス戦の幕が開ける。そういえば、今日バッカーノの再放送だったなあ。
 ]のボスは確か八連戦…ぐらいだと思う。どうせ早くなんて終わる筈がないと、ベタフラッシュを仕上げながら応えた。いいですよ。そう言った瞬間に久々知先輩の握っていたコントローラーが凄い勢いで音を立てる。コマンド入力なんてものじゃない。あえて言おう、チートであると。デートがそんなにしたいのかなあ。言ってくれればいつでも付き合うのに。一応は恋人だから。柄にもないことを頭から追い出しペーパーの下書きでも描こうと机をがさがさやっていたらインクの瓶が倒れた。というか倒した。原稿一枚が丸々駄目になっていた、ああああうそ。絶望した。自分が思っているより私はデートのお誘いに浮かれていた。






100204/ザセカンドディメンションセカンド

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