※アイドル



 馬鹿でかいポスターが駅によく貼られていることをお分かりになるだろうか。俺はよく目にする。旅行に薦める宣伝だったり、映画の予告だったり、内容は様々だがこの頃特に見るようになったのはとあるアイドルのふわふわの髪がピンクベースに写された某シャンプーのポスターだ。シャンプーというよりは確実にアイドルがメインなわけだけど、それ、itは周りと見比べてすごく目に留まるので宣伝効果はあるんだろう。多分。
 その駅から歩いて数分のところにぼろくも新しくもない俺のアパートがある。ちなみに何故俺が外に出ていたかと言うとバイト帰りだ。大分体は疲れている。入った途端に目につく金髪が人の良さそうな笑顔を浮かべていて、近くに例のポスター(他多数)でよく目にする紫と灰とを混ぜて三で割って薄めたような髪があった。

「遅れた。ごめん」

 「お邪魔してます」「やっほーへーすけくん」どちらとも力の抜いた体勢で俺を迎えた。それにしても人の家でくつろぎすぎな感じもするが。いつも通りなので気にしない。綾部の近くに腰を降ろしたら当たり前のように綾部が膝に頭を乗せてきたので撫でてやる。綾部はかわいいなあ。兵助くん僕も撫でてー。タカ丸さんあんまり調子に乗ると怒りますよ。ごめん。さりげなく垣間見える綾部の焼き餅が限りなく嬉しかったのでふにゃりと顔が崩れたのがわかる。(綾部がそれを見たらしくおやまあと瞬きをしたのがまたツボだった。)

「絡まれたりとかしない?」

「あー…絡まれることに関しては注意されますよ。来るまで十三回声をかけられましたし。」

「他には?こんなところにいて事務所になんか言われない?」

「プライベートに首を突っ込むのはプライバシィ侵害です。」

 ふう、と綾部が息をついた。そしたら斉藤が話しに混ざりたかったのか挙手する。ねえねえ聞いて、ナンパを全部撃ち落としたの僕なんだよ!お前怒ると無駄に柄悪いもんな。そ、んなことないよねえきはちろーくん。否定しかねます。うええ。斉藤がめそめそしながら綾部に抱き着いた。なんだこれ。かわいい。
 何気なくテレビをつけたら空気を読んだように綾部のコマーシャルで苦笑する。この頃の日本は空気が読めすぎていると思うのだが。しかし、国民の皆さんが大体は目にしたことのあるであろうコマーシャルに出ている国民的アイドルが、今何の変哲もない一般人の家で談笑しているわけだ。世間は狭いね。そして俺はまだ俺から離れる様子のない綾部に、斉藤への当てつけも兼ねて顔を寄せた。ら、綾部が俺の首に腕をまわし頭を浮かせ目を閉じた。






091103/It's small world.

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