拝啓、朝夕はめっきり涼しく、過ごしやすくなりましたが、お変わりございませんか。なんて堅苦しいのは止めだ、肩が凝る。元気でやってるか?こっちもまあまあ元気、とりあえずいつも通りだ。皆一人一人が書きたいって言うから一文一文別々なのだけれど、わかるかな。蛞蝓好きになった?あー今殴られた、金吾に殴られました。話が擦れた、ごめん。たまには顔見せてくれないと寂しい。今度皆で会おうな、それだけが伝えたかった。 敬具
 追伸、乱太郎をあまりなかさないよう。


「…」

 こいつらは人を何だと思っているんだ。これがまず一番の感想だ。二番の感想は字が汚いのと内容が支離滅裂なのに眉を寄せた。(とりあえず団蔵のは読み切るのに凄く苦労した。)馬鹿じゃねえのかこいつら。つーか馬鹿だろ。ごろりと寝返りを打ってこの紙っ切れを顔に被せて目を閉じる。あああなあにが泣かさないようだしんべヱの馬鹿野郎。俺が乱太郎を泣かす訳が、地球が逆回転を始めても有り得まい。ほんと、馬鹿。
 沸き上がる不機嫌を瞼の裏側で抑えて羊を数える。寝ちゃうかな、でももう少しで乱太郎が買い物から帰ってきそう。気配が僅かにするから、と羊を頭から追い出して乱太郎を待った。いまだに顔がこの馬鹿馬鹿しい手紙に馬鹿馬鹿しく隠されていたのでそれを右手でくしゃりと潰す。さて、ここまでで何回馬鹿と言ったかな。ただいま。がらりと戸を開けた乱太郎が荷物を適当に置いてこちらへ駆け寄ってきた。おかえり。

「聞いて、今日は大根貰えたから味噌汁は大根にしようね。」

「貰えたって、なんで?」

「ドケチな子に分けてやれって」

 くすくすと嬉しそうに笑う乱太郎を売場のおっちゃんも見たかと思うと少しだけ悔しい、けど、まあ許す。何てったって乱太郎がかわいいから許す。そのかわいい乱太郎が俺の手の中でぐしゃりと握り潰された手紙を目敏く見付け、あ、と声を漏らした。

「きりちゃん手紙。私も読みたいな。」

「読まなくてもいーと思う。心の底から」

「えええー?なんで、どうして」

「くだらないんだよ」

 別に読んじゃいけないとは言ってないんだから俺に跨がってぴょこぴょこ跳ねるのは止めてくれ、場所が場所なだけにむらむらする。とは流石に殴られるだろうなと思ったので黙った。しかし、ああ、そこに跨がるって、あれかなあ、試されてるのかなあ。無理だよ。
 あー、もしかしたら啼かさないよう、の意味だったのかもしれない。そりゃ無理な相談だ。






090920/追伸
一年総当たり戦

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