※弟×兄



 ただいまあ。声を張り上げて戸を引くと兄ちゃんがおかえり、と笑ってくれた。休みを貰って帰ってきたのだけども。事務も悪くはないし、忍術学園にいるのは楽しいけど、やっぱり僕のいる場所はここだよ、と思った。

 扇子の仕事をやっている兄ちゃんにぎゅっと後ろからしがみついて僕よりも手入れの行き届いた柔らかい髪に顔を埋める。さりげなく首筋に唇を付けたらこら、と怒られた。鋭い。案外長い睫毛に手を伸ばすと呆れながら兄ちゃんは作業を止めてゆったり目を閉じた。軽く瞼に口づけてからそおっと撫でてみる。ふわふわ。そしてさらさら。人様の睫毛なんてあまり触る機会はないけど、てん、兄ちゃんのならずっと触ってたいなあまる。作文風。
 僕には兄ちゃんしかいらないのに。兄ちゃんがいればいいのに。この世界が石になって兄ちゃんだけがいれば、いいのに。僕は二の次で、まずは他の物体の排除だなあ。いるものは兄ちゃんと兄ちゃんが生きるために必要なもの。僕は死んでていいからそばにいたい。撤回、できれば生きてたい。

「兄ちゃん、すき」

「わかってるよ」

「すき、」

「うん」

 本当は今すぐに全人類を血祭りにして×しても(自主規制)いいんだけれど、僕は兄ちゃんを傷付けたくないし、あと何よりめんどくさいのでやらない。






090825/ペケひとつ

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