※アニメ綾部と漫画綾部



 その瞳に私は映ってない。もっと何か違うものをじとりと生温い温度で見つめ何にも干渉しません、と訴えているようだ。同じなのに。穴掘りの技術も全て。私も人との繋がりを手に入れようと手を伸ばしはしない。そういう人間なのだ、私は。
 私は何も尋ねない。癪だから。気持ちが悪いから。関わりたくないから。私だから。よくはわからないけれど何故だか異様に気に障った。笑顔をぱっと貼付けてそいつは軽々しくも滑らかに「君に大切なものはあるかい」と言った。大切なもの。誰の、私の。ありますよ。それだけ零した。だがそいつは驚いたようにへえ、とまた笑う。(苛々する)
「死んでください。」
「君にも影響があるかもよ?」
「それでもいい。死んでほしい。」
「…」
「…」
「…」
「冗談ですよ」
 ちょっとしたブラックジョークを流さずに受け止める様がうざったくて馬鹿でかい機械にでも握り潰されればいいのに、と聞こえるように言った。なんて、馬鹿なんだろうと馬と鹿に失礼ながら思った。
――――
 何をないようで全てを掴むその手が、なにもかもが面白い。くだらなく愚かな私より全然。にこにこと笑顔を向けてやると怪訝そうに眉をひそめた。「君は何を見ているんだい」「貴方しか見ていませんよ」おや、それは嬉しいね。でもそれは嘘だろう。「貴方が見ていないから私がわからないんでしょう」「そんなことは…………、あるかもしれないね」「…」どうでも良さそうに目の前の僕、は手鋤を取りがつがつと穴を掘り始める。
「何のため?」
「さてね」
 全くわかりません。僕は、ああ目の前の僕ではなく、僕は穴掘りを手伝いはしない。掘るのは好きだけどきっと邪魔したら怒るだろうから。君は面白いね、と苦笑いしたら僕(目の前の方)の表情が呆れたようなものになって、のちにやっぱり死ななくて結構、と微笑した。見なくて良いものなんてこの世に一つとない。





090728/ドッペルゲンガー

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