※転生



 あの頃は髪結いが難しいともなんとも感じてなかった。ただ自分のしたい場所で切って、結んで、解かして、それが面白くて楽しくてすごく好きだったのに。今では何も出来ない。皆は僕のヘアカットを上手いと褒めるけれど嬉しくない。なんでかな。もう一度沢山の髪に触れて、結いたいのに、出来ないのが限りなくもどかしくて。
 荒れている髪を引っ張ったら怒られるし、自分の好きに髪を切れないし、ああやはり何も出来ていないじゃないか。この世界は僕には狭すぎる。



――――
 ちりりん、とドアに付いている鈴が揺れたのでへにゃへにゃの笑顔を張り付けていらっしゃいませー、とドアに視線を向ける。その先にいたのは見覚えのある小さな背が十一と大きい背が二、おまけには沢山の黒髪やらなにやらが見えたのでとりあえず僕は一番大きい背に近付いた。

「先生はやっぱり髪が痛んでいるんですね。トリートメントとリンス、コンディショナーとドライヤーはおかけになっていますか」






090717/久方

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