私の中か、はたまた外か、知るよしもないが何かが軋んでいる。ぎりぎりぎりと音をたて追い詰め詰め寄って私を崖っぷちに立たせあとひとつ声帯を震わせたら落ちるのだ。馬鹿げてる。馬鹿げている。こんな比喩は馬鹿げている。実際落ちるわけじゃない。ただ私がどうなるのかはわからない、だけ。
 漂う蝶々に手をのばす。ひらり、かわされた。横の蛹に手をのばす。壊すと嫌だから触らず。ついでに意味もなく畳に爪を立てた。ああ苦しい苦しい苦しい苦しい。助けてほしい。ぐっと息を吸うのをやめてみた。少しずつ少しずつ肺が酸素が足りないと求め心臓がことりことりと緩やかなものになる。ああこのままでは死ぬな。はっ、と口を開けた。
 ふと、目の前の視界が広がる。一面に広がった夕陽の(ような)色がじりじり黒くグラデーションになっていた。ちなみに今は蝉がじわじわ鳴く真昼間であり、夕方ではない。背後にはきっと青い空と白い雲が広がっていることだろう。手を動かし四つん這いのまま動けばびしゃりと黒ずんだ赤が手についた。けど見ないふり。

 痛い。胸が裂けそう。腹が死にそう。腕が足がもげそう。きいんと耳鳴りがする中、私は暑さに戸惑いながらこの言い知れぬ劣情感に浸っていた。どうしてしまったのか教えておくれ。






090626/どど黒

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