「ねえ先輩」

 委員会が終わった後縁側に腰掛けていると恋ってなんですか、と隣の喜八郎が無表情のまま首を傾げた。へえ、そんなこと言うキャラだったのかお前。じゃなくて恋を私に聞くか普通。

「興味がないからわからんな」

「そうですか」

「…お前…知りたいのか知りたくないのかはっきりしろ」

「どっちかと言えば知りたいです」

 ふわふわと舞う桜の花びらを目で追いながらふむ、と唸ってみせる。恋、忍びに色恋沙汰などいいのだろうか。よくはないけどまだ忍術学園にいる内はいいんじゃないかとは思うが…しかし興味は湧かない。喜八郎は恋でもしたのか、いえそういうわけでは、では何故、と質問される側からする側に変わる。すると喜八郎はたいして気にもせず髪に絡まる花びらを摘んだ。

「唐突に、なんだろうと思ったんです」

「…ふうん」

「興味なさそうですね」

 実際無い、と思ってから恋を考えてみる。先輩として、きちんとしたことは教えてやりたい。なんかそいつを思うと胸が苦しくなるとか、こう…曖昧なものじゃないか、ていうかそういうものだ。
 上手く丸め込もうとすると喜八郎が少し考えるような仕草をしてああ、と口を開いた。

「じゃあ先輩といると胸が疼くのは恋ですか」

「ぶっ」

「先輩?」

「お前…っ、馬鹿か!」

「?」

 ひょいと顔を覗き込む喜八郎を軽く小突く。こいつは!なんだこいつは!
 そして無表情の中に疑問符を浮かべている喜八郎がかわいいなんて、断じて思ってない!






090518/恋ってなあに?
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