「土井、先生、」 「利吉くん…その、離してくれない?」 「今は足を怪我しているんで仕方ないでしょう?」 さっきまで普通に歩いてたじゃない、と土井先生は呟いた。それでも私を離そうとはしない。こつ、と肩を組んだまま頭を擦り寄せる。癖の強い髪の毛がふわふわしていてかわいい。 「先生…良い、匂いがしますね」 「そう?」 「ふふ、」 くすりと喉を鳴らせば土井先生は不満そうに唇を尖らせる。なんというか、こういうところは子供っぽい。 いつもは恥ずかしがって人前ではくっつけないのだけれど今は違う。怪我と言う建前上、肩を貸すのは当たり前なわけで。ということは私は人前でべったりできるわけだ。この時ばかりはドクタケに感謝だな。足は痛いけど掠っただけだし。 「土井先生」 「なに」 「帰ったら私三日は休みなんですが」 「私は学校があるよ」 「夜は暇、でしょう?」 「…君ねえ…」 破廉恥だ、と土井先生はぶつぶつ言っているが気にはならない。本当に暇じゃないときはもっときちんと断る筈であり、…私も手慣れたものだなあ…。 「ねえ先生」 「なに」 「女装、お似合いですよ」 どさくさに紛れてつう、と鎖骨をなぞったら思い切り殴られた。 「殴ることないじゃないですか!」 「き、君のせいだろう!」 「…あれ、先生照れてます?感じちゃいました?」 「うるさい!」 090508/ハートまでが |