今日は夜遅くまで仕事だった。から、帰るのがすごく遅くなった。
 留三郎とはしばらく会ってない。家にも出向いてないし留三郎が、あの留三郎が僕の部屋に来るわけない、出無精だから。はあ、とため息をつく。幸せに逃げられたな。なんとなくエレベーターの気分じゃなかったからマンションの階段をだるだると登って自分の部屋につく。鍵どこやったかな。ポケットに手を突っ込む。ない。鞄を漁る。ない。あれ、もしかして忘れた?でも朝は閉めたような気がするんだけど。落としたかな、と諦め気味にノブを引いた。

「あれ」

 開いてる。かちゃ、となんとなく静かに中に入って中からはきちんと鍵を閉めた。泥棒が入ったらどうするんだ、別に盗まれて困るのなんかひとつもないが。ごそごそとポケットを漁ると飴の包装紙に埋もれた鍵を発見する。やっぱり鍵閉めてた、よな。
 ふと、焦ったように速めの足音が聞こえて体がびくりと跳ねた。靴を脱いで進もうとするとリビングから凄い勢いで何かがこちらに向かってくる。のを止められるすべもなくぎゅうと抱き抱えられた。さらさらした黒色が暗闇の中で光る。もしかしなくてもこれは、

「留三郎…?」

「…おかえり」

 ドアに押し付けられる形で留三郎は抱きしめていたが触れる部分が寒いとでも思ったらしい。ひょいと肩に担がれ…ちょっと待った担がれてる?

「と、留三郎?」

「伊作…」

 とすりと優しくベッドに降ろされ耳元に息がかかるくらい近くに留三郎の顔があって…な、なんだこの状況…。かり、と耳を噛まれて引き攣った声がでた。うわああ本格的によくわからないことになってる!そのままべろりと舐められてやばいと思った僕はぐい、と体を押した。でも全く離れない。力の差がひどい…!

「留三郎、ちょっと、聞いてる?」

「聞いてる」

「じゃあ」

「それは断る」

「…なんで?」

 潔く諦め背中をぽんぽんと叩いてやると留三郎は僕の首に頭を擦り寄せてきた。表情は見えないけど、体重がかからないよう腕で支えているのがわかる。別に僕も男なんだから平気なんだけどな。

「…」

「留?」

「お前を、」

「僕を?」

「…好きだから」




 …おっけー落ち着こう。
 留が、僕を、すき。すきって何だったかな。多分テンプレートでは気に入るとかそんな意味だったと思うけど。そのベクトルが僕に向くって実感わかない。
 もやもやしていると留三郎が顔を上げてこちらを伺ってくる。弱々しいとかじゃなく、指で僕の顎を掬い強引に。

「嫌…かよ」

「嫌では、ない、よ?」

 僕も留三郎すきだよ、と笑ってみせると瞬間に後頭部を押さえ付けられ唇が重なった。なんかよくわからないけど、ハッピーエンドなのかなあこれは。






090506/You are loved by me.

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