「いらっしゃいませー…、留三郎!」

「おう」

「どうしたのー珍しいね留この頃来ないのに」

「近くまで来たからついでだ」

 実際には仕事に飽きて伊作の顔を見に来ただけなんだが。まあそんなことは言わない。ていうか言えるわけがない。もうすぐ終わるから待ってて!と伊作が言うのでちょっと嬉しい。最近会えてなかったのもあるがそれよりもここまで仲良くなったことを実感できるからだ。前はもっとおどおどしてて名前聞くのにも苦労したなあ。

 しみじみと思い出を振り返りながら雑誌のところへ移動して適当なものを手に取る。内容なんてなにひとつ頭に入ってこないけどとりあえず手持ち無沙汰になったからだ。いまだに告白はできていないが今のままでいいか、なんて思う。伊作は優しいしかわいいし。…彼女ができたら嫌だなあとは思うけど、伊作が幸せならいいか、と…。

「あれ、留三郎彼女出来たの?デートスポットなんて見て」

「ああ?できてねえよ」

「…ふうん」

 いつの間にやら隣にいた伊作を見て雑誌を棚に戻した。むう、とぶすくれているのでどうした、と頭を撫でると伊作は眉間にしわを寄せこちらを睨む。かわいいなあほんと。

「…」

「伊作?」

「留三郎は、」

 僕のだから、と呟いたのが聞こえて一時停止した。ああ、遊ぶ時間が短くなるとか?大丈夫だ俺はなにより伊作を優先するから。なにも考えず軽く言うと伊作がぴたりと立ち止まる。

「どうした?」

「…留」

「なに…、っ!」

 くるりと振り返った瞬間ぼすっと伊作が胸に飛び込んできた。良い匂いがする…じゃなく、こいつになにがあったと言うんだ。なんかすげー甘えててすげーかわいい。ぎゅうう、と顔を押し付ける伊作の頭を撫でてみるともっと強く腕を回された。俺より低い身長やら案外細い腰やらを味わっていると不意に伊作が顔を上げる。

「留三郎は彼女なんて出来ないよね!?」

「え?」

「だって僕がいるし。暇ないし。」

「伊作?」

「デートなら一緒に行こう。ね!」

 首元を捕まれ顔を近づけられたのでいたたまれなくなり、そうだな、と返すと伊作は嬉しそうにまた抱き着いた。ええとこれは期待してもいいんだよな?軽く告白されたよな俺?
 じゃあ帰ろ、と腕を引っ張られてとりあえず帰ったら抱きしめようとくだらない思考を働かせた。






090504/ストレイシープ

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