※現代



 数学の、公式を覚えるのが好きだ。当て嵌めれば答えが出る数学が好きだ。国語と違って作者が絶対考えていない後付けを、思い浮かべる必要もないし。
 さらりと英語では書かない筆記体のkを見つめる。人間との関係も数字で表せたらいいのに。好感度五割とか。百パーセントが最高として。兵助は99。八左ヱ門は83。勘右衛門は80。8836は、とここで語呂合わせになっていることに気付く。一夜一夜に人見頃だとか、人並みにおごれやだとかそういった類い。
 (三郎は、なんだろう?)何乗?無量大数?イコールで結べそう。僕と。うん。

「雷蔵、ついに集中力切れたね」

「えっそんなことないよ」

 嘘、とボルヴィックを一口飲んで三郎は僕の右手をにやにやしながら指差した。雷蔵飽きるとペン回し始めるからわかりやすい。閉口しながら右手のドクターグリップをくるりと回す。…癖直そう。ムカついたので三郎の着ているパーカーのフードを引っ張った。首絞めるぞ。

「クーラーつけて」

「了解」

 多分二十二度。怒られてしまいそうな温度設定だが、冬は使わないから許してほしい。汗ばんだ肌は急速に温度が下がっていってきもちいい。テーブルの上のフルーニュを飲んだら生温くて顔をしかめた。おいしいのにぬるい。
 数学をやりに来たんじゃなかったの?休憩だよ、雷蔵もダレてるし。三郎がテレビに繋いだままのプレステ2の電源を入れて(学校から一番近いからと僕の家に兵助達が置いていった一つ、某アニメ)(夏に見たくなる。仮想空間戦争とか花札とかのあれ。)ディスクを入れる。

「何曜日かの計算できる?」

「…ツェラー…?それすらも曖昧だからわかんない」

「わかるだけ凄いね…」

 だってそれ三郎が気になるからって調べたんじゃん。そうだっけ。興味なさそうにコントローラーをいじってゲームやりたい、とぼやいた鉢屋は○ボタンを押した。オールプレイだ。

「らーいぞ」

「ん」

「見終わったらご飯買いに行こうね」

「昼は買うとして夜ご飯何にしようか」

「冷やし中華食べたいかな」

 じゃあ麺とキュウリ買わないと。冷やし中華って何を乗せるのが正しいんだろ。僕はかにかまと半熟ゆでたまご(金糸たまごとは別に)乗せるのすきなんだけどな。
 始まった映像を見ないで三郎は僕に手を伸ばす。髪を撫でられた。ああ、暑さで頭が沸いている。乱れた髪の毛が視界にはいるのが嫌で、とは言え、短髪の僕にはあまり関係ないけど眼を瞑った。三郎はどんな顔してるかな。






110720/こっそりと真夏色へ

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