※現代/二重人格



 眠る時間が多くなってきた。最初は寝不足のリバウンドか何かだろうとしばらくは早寝早起きを心掛けていたのだけれど、何時間寝ても全く早く隈が消えない(まるであの先輩みたい)。しかもだんだん眠気のレベルが上がっているのだ。ゆるやかに。私を蝕んで離れない。眠い、寝たい、けど、寝たくない。怖い。
 一気に飲み込んでから目を擦り、うつ伏せに体を転がして枕にしている鉢屋先輩の腹に顔をうずめた。

「ちゃんと起こしてやるから。おやすみ」

 良い夢を。鉢屋先輩はとんとんと背中を叩き始める。嫌ですよ、目が覚めなかったらどうすればいいんですか。声に出そうとして目の前がぼやけた。私は泣いていた。悲しくはないし、感情もなにもなかったような気がする。だけど私は、私は。
 起こして。僕はいいから私は起こして。僕の代わりに君が生きて。


 深夜。気分としては超昼間なのだが、ワールドクロック的なものから見れば日本時間一時ちょっと過ぎである。(ちょっと、が誰基準なのかは知らないが、まあ俺基準では数時間はちょっとの範囲内である。)隣で眠り続ける彼は、ついに目を覚まさなくなった。限界を超えたのだ。

 時間と比例するかのようにだんだんと、色素が抜けているのが手に取るかのようにわかってしまう。肌が透き通る白へと、髪が光に照らされる桃色へと、彼の、全てが、薄く脆くはかなくたおやかなものになるのが。いつかきっとなくなってしまうのだ。彼の顔が、表情が、おもいだせなくなってしまうのだ。悲しいとも言えぬわだかまりが喉につっかかる。
 (わたし、がいれば変装できてよかったのだけれど、おれ、はできない。覚えているのに、身体がついて来ない。追えない。)そしたら、そしたら俺が彼になる。なれっこないけれど。


 そういえば最近私にあっていない。(と思う)。そいつに会えば彼を思い出せるのだろう。全部なくなってしまったとて。なら、それでいい。それでいい。今はまだそこにいるから。俺の記憶にいるから。私がいなくても、これからは俺が持っているから。






110714/こんがらがる僕と俺と私と

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