※コンビニ



「685円です」

 ちゃりん、とお金を置いてにこりと笑う店員から弁当を受け取った。数日このコンビニに通っているがこの店員は毎日いる、気がする。というか確実にいる。
 最初は普通に店員としか見ていなかったのだが、この頃俺はおかしい。店員を見ればどきどきするし、笑顔にきゅんとくる。なんだこの気持ち。

「この頃よく来てますよね。この辺に住んでるんですか?」

「…ええ、まあ」

 急に話し掛けられてどきりとした。あああもっとうまい返事できるだろ俺…!しかし店員は気にすることもなく僕もなんですよ、と笑顔を向けた。今すぐにでも頭を撫でたい、が、踏み止まりそうなんですか、と少し笑ってみせる。
 と、店員は目をぱち、とした。

「…なにか?」

「え、あ、いや、笑った顔が綺麗だなあって…」

「はあ…ありがとうございます」

「いえいえお気になさらず」

 またふわりと笑って店員は俺をみた。周りを見ても他の客も店員もいない。暇なのかこいつは。

「僕、引っ越して来たばかりで友達いないんです。暇な時は話し相手になってくれたら、なんて」

 人の顔を恐る恐るうかがいながら店員は尋ねてきた。その表情にノックアウト(精神的な意味で)された俺は意を決して声を出す。

「角の」

「え?」

「この先の角にあるマンション、三階の端が俺の部屋だから」

 暇だったら来い、と言うと店員は花が綻ぶような笑顔を寄越した。同時に客が入って来たのでとりあえず受け取った弁当を持ってコンビニをあとにすると後ろからありがとうございましたーと間の抜けた声。ちくしょうかわいいじゃねえか。男なのに。






090503/淡いフラッシュバック

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