六年間付き合ってきた。恋愛的なものではなく、腐れ縁的な意味で、だ。それでも好きになれないやつは好きになれないのだ。そういう相手に限って離れられない、だからもっと面倒な方になっていく。俺は別に嫌っているわけではなく、あいつが俺を嫌い。これが変えようのない結論だった。

 用具委員会の備品を静かに直してたら、衝立の向こうから静かにしょりしょりと薬を潰す音が始まる。控えめで特に耳障りではない。ぱきっ、ばきっ、と音を立てた桶がきっちりとした形になったのを確かめて一つ端に寄せると「何してるの」と声がかかった。テンションはひえきっている。

「…一年に頼んだんだが、直せないと泣き付かれたからな。自分で直してるんだ」

 ふうん。聞いた癖に興味なさそうな返事をして、止まっていた薬を砕く音が続く。じゃあなんで聞いたんだよ。

「後輩には優しいよね?」

「お前が俺を避けてんだろ?」

「ショタコン」

 ぐさりと心臓に刺さる言葉の後、ばん!と大きな音がして戸が開かれた。(すぐ後に障子がばらりと剥がれた)(誰が直すと。)
 俺を一瞥した小平太が体育委員さながらのハイスピードで伊作に飛びついた。そのままの勢いで転がり滑り壁に激突して衝立は大きな音でもって倒れた。ばたん!って。その前に伊作はなんで振り払わないんだよ。俺がやったら絶対拒絶するくせに…いや、俺はこんなことしたこともないが。

「今度の実戦で二人グループなんだって!組別でやるらしいから連絡にきた!」

「仙蔵にでも言われたの」

「いーや先生!」

「おいうるせえ」

 ちょっと勢いつけてちょっと大声出しただけでそんな怒るなんて、カルシウム足りてないんじゃない。ほっとけ。ばしっと何かを投げてきたのでぱしっとキャッチした。紙の塊。

「ストレス鎮静剤」

「…そりゃどーも」

 むかつく。と、小平太が固まったまま目を丸くして見つめていた。何だよ。

「…いや、………別に」






110129/わたくしにわかることとは

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