※現代




 カップラーメン。スタンダードな三分待つタイプの、具もスープのもとも最初から入っているやつ。(俺はこれが一番楽で好きだ。)(綾部は総じて具を抜くので四分待つラーメンとかの方が好きなんじゃないかな。)話題も何もなく、カーテンの隙間からきらきらと覗く日差しで漂うほこりが際立つ、のを綾部が目で追っていた。かわいいけど。思考回路が謎である。
 時計を見もしない綾部は俺に今何分と確認しようともせずベリベリと封をしていたシールをひっぺがしていただきます、と手を合わせてからぐるぐると箸で中身をかき混ぜる。その瞬間に携帯のタイマーが鳴った。



 綾部が、取った蓋の上に立方体のチャーシューを置くので、カレーのスープに浸かったそれをひょいと食べる。おいしいのに。じゃがいもも置こうとしたのでそれくらい食べなさい、と言ったらしぶしぶとじゃがいもを置くのをやめた。ずるる、と醤油味とは言えないけどまあ美味しいラーメンを啜る。「ひとくちくださいな」「どうぞ」「私のもどうぞ」てっきり容器ごと渡してくれるのだろうと思っていたので待っていたのだが綾部は一口分箸で俺にカレーラーメンを差し出す。食べづらかった。(ちゃんと文句は言わずにそのまま食べた)(綾部は普通に容器から食べてた。)




 猫舌なので熱いスープが飲めない綾部は、カップラーメンを食べ終えたあとほぼ確実にテレビを見ながら冷めるのを待つことが多い。今日は紅白とジャニーズとお笑いをぐるぐる、見たいものは定まっていないし綾部も何も言わないから、何かレンタルしとけばよかったかも。タイタニックとか、アニメ映画を大量にとか。どちらにせよただの暇潰しなのだが。

 テレビがカウントダウンを始める。今年の終わり。来年の始まり。月が変わるだけなのに日本人はこういう行事をするのが好きだなあ。いや俺も日本人だけど。先週…むしろまだ一週間もたっていないのにキリシタンから変化するとかすごい。根性が。
 綾部が冷めた年越しカップラーメンをごくごく飲み干して口の端を舐めた、のを見ていたらテレビがわあっと賑やかになった。
 さようなら去年。こんばんは今日のきみ。(こんなこと言ったら毎日言わなきゃいけない気もするわけだけど。)

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

「あけましておめでとうございます。こちらこそ」






101231/さよならはじめましてよろしくね

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