※転生



「一人きりになったら、ダメになるのは私の方だ」

 雷蔵がコーンポタージュの缶を握り締めて、はあ、と周りより少しだけ濃い白い息をはいた。長めのマフラーは、いつもは二人で巻いているのだが。今は三郎がいないので歩く雷蔵のあとにひらひらとたなびいている。

 みんな誤解してる。依存しているのは僕で、今の三郎は僕がいなくても生きていけるんだ。現に、この瞬間三郎はここにいないでしょ?ちゃんと前を向けてるんだよ。…僕は三郎しか見えないんだけど。

「竹谷はちゃんと進路とか考えてるもんね」

「そりゃあ、まあ、もう高校二年だしなあ」

「僕はダメ」

 言い方にちょっとだけ靄がかかった。けど俺にはどうしようもない。ダメ、の厳密な意味がわからない。コンビニ寄ろうか、と雷蔵が言ったから釣られるように頷いた。この時期はチキン食べたくなるねとまるで普通の高校生みたいに言うから、今までの会話が一瞬にして冗談に見えた。


「今も昔も変わらない。二人じゃないとちゃんと存在できない。そんな不確かなものだよ、私は」

(だから今は生きてない。)雑誌を片手に溢した雷蔵の言葉を、俺は聞き逃さなかったが聞かなかったフリをした。






101130/酸素対進路相談

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