※ゴッドイーター



「死んだって、いい。私が生きる意味なんてこれ以外にないんですから」

 自分の背丈くらいの大剣を肩に担いで廃墟を真っすぐ見下ろした彼は、そっとドアに手をつけた。着くまでの時間、何を考えているのかはわからない。その瞳の奥に隠しているものは何なのか。彼はどんな気持ちで神を殺しているのだろうか。

「さよなら」(何故)

 ヘリから飛び降りた綾部の服が、追い風を受け広がった。ばさばさと。廃墟に降り立つときにずぶりと大剣の切っ先が蛹を貫く。その勢いを殺さずに前に着地する。その状態からぐるっと回転して虎の右腕を切り取り、怯ませた拍子に赤が視界を覆った。
 それを合図(厳密には時間を数えていたが)に俺もヘリから飛んだ。無駄な巨体をぐらりと揺らしたそいつを狩りとっている綾部を護るように周りの雑魚を蹴散らす。何匹かの大型がうざい、が、苦戦するほどでもない。それに腕が契れようが体に穴が空こうがなんだって、死にはしないのだ。(なら、俺の仕事は自己防衛ではなく綾部を護るということになる。)
 血液にしか見えない偏食因子の液体を頭から浴び、真っ赤に染まった綾部を見て、なんだか末恐ろしいとかなんとかより不安になった。壊れてはしまわないか。もう壊れてるんじゃないのか。あやふやでうやむや。なんて表せばいいのやら。意識が遠い。深い。見えなくなってしまいそうで、ぐしゅぐしゅと牙を剥く短剣(というにはあまりにも大きい)が俺までもを食べるような。――









――ヘリが来ている。きっとこれからも息をするように殺していくんだろう。そして息をするように傷つくんだろう。それは俺も、俺達も同じだ。(俺達は呼吸をして生きているだけだから。)殺さないと生きていけなくて、必ずしも必要とは言えず。けして不要ではないのに。神様は、楽園をくれるわけじゃない。檻に閉じ込めて、その中で殺し合う様にいけしゃあしゃあと高見の見物を決め込んでいるのだ。そしてそれを殺すために今も息を吸う。呼吸が、しにくくなる。どれもこれも、すべて百も承知だ。






101028/殺しても殺してもまだ足りないまだ殺し足りない

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