「お前もてるんだな」

「へ?そんなことないよー」

 滝夜叉丸から話を聞いた小平太の話を終えるとぽつりと留三郎が呟いた。その言葉に伊作は困ったように髪を指でいじる。(多分伊作は気付いてないんだろうけど、)精一杯の告白に気付いてやれよ。くすりと笑いを溢すと留三郎が眉を寄せてこちらを睨む。ああ怖い怖い。

「だって僕に近寄ると不幸になるからさー、あんまり寄って来ないんだよね」

「…ふん」

 伊作の言葉にほっとしたことがわかる留三郎は、面白い。伊作が好きオーラが大胆放出してる、みたいな。ついからかいたくなるんだなこれが。

「そうか?案外評判良いぞ。優しいって」

「、仙蔵」

 少しからかうと留三郎が声を荒げた。本当伊作に関わると煩い、とか思ってるとその点留はモテモテだね、という言葉に顔を真っ赤にして押し黙ってしまった。やはり面白い。
 別にモテなくても伊作がいればいい、とか恥ずかしいこと思っているんだろうなあ。それを口には出さないけれど顔に書いてある。これで付き合ってないんだろうか。はたから見れば両思い、いや両片思いといったところ…実際は付き合っていてもおかしくない。

「伊作」

「なあに仙蔵?」

「お前ら恋仲か?」

 ちょっと気になって伊作に近寄り尋ねるときょとん、と目を丸くした。留三郎は聞こえてなかったらしくこちらに首を傾げている。そんなわけないよ、とか軽く返ってくるのかと思いきやそうでもなく、伊作はかああと頬を染めて勢いよく立ち上がった。

「僕の片思い、だよ、」

「え」

「何の話だ」

 そのまま伊作は留三郎をちらりと見て照れるように腕で顔を隠すと襖を開けて部屋から出て行った。

「ごめん、のぼせたみたいだから外行って来るねー!」

「伊作!?」

 仙蔵何言いやがった!と首をつかみ掛かる留三郎を鈍いと一瞥してからとりあえず呟いてみた。

「早く捜して来ないと私が奪う」

「はあ?」

 にやり、と微笑んで留三郎を眺めたら思い出したように奪われてたまるか!とおもいっきり殴られた。いっ、たい。
 何倍にして返してやろうか。






090430/傍観者を気取り隊

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