※現代



 寝坊をした。いつもなら起こしてくれるのに、と止まっている目覚まし時計を見てから、三郎を探す。部屋にはいないからリビング。リビングにもいないから風呂。風呂にもいない…と面倒になってキッチンの冷蔵庫から牛乳を取り出した。残り少ないのでコップには注がず、そのままらっぱ飲み(紙パックでもらっぱ飲みと言っていいのだろうか?)。何の気なしにカップ麺とパンの詰まった段ボールを覗き込む。食べたくないなあ。
 やることがなくなったので、すすけてきた白いソファにどかりと座ってテレビをつけた。ニュース番組のナレーション、最近声優よく使うなあ。特に興味のない新商品が何だの、最近は殺人事件がめっきり多くなってきたのをバックグラウンドミュージックにしていたら、ガチガチと鍵の噛み合う音がした。がちゃっ。ほどなく三郎がガサガサビニール袋を揺らして顔を見せた。

「おはよう雷蔵」

「うん。どこ行ってたの?」

「ジャンプ買いにコンビニまで。あとアロエヨーグルト買ってきたけど食べる?」

「食べる」

 はい、と見慣れた緑色のパッケージが差し出される。僕があまり朝ごはんを食べないと知っての気遣いも一緒にだ。少し嬉しい。いつもこうなのだけれど。蓋を開けたら三郎がプラスチックのスプーンを突っ込んだ。至れり尽くせりだね。私がしたいからやってるだけだよ。にこ、と笑ってヨーグルトの蓋をぷつりと切る。ねえなんで今日起こしてくれなかったの?普通に学校なんだけど。そこまで言ってコンセントと繋がる携帯に目を向けたらチカリとライトが点滅していた。兵助か八左ヱ門か勘右衛門か。皆か。先輩か。はたまたスパムか。アロエをぷちぷち潰しながら尋ねた。

「んー?なんだろ、なんとなく、今日はずっと一緒がよかったから?」

「…ふうん?」

「ダメだったなら謝る」

「別に、いいよ。僕もなんかそんな気分になってきたから」

 三郎は時々かわいいから。多目に見る。いつも良くして貰ってるしねえ。
 なんでもない日だからこそ、こんな日があってもいいよ。多分、僕、三郎のこと愛してるし。三郎が僕を思う気持ちの量に負けず劣らず勝るとも言えず。でもそんな今日がしあわせだと思いたい。毎日がいらないと思いたくない。だから、許してあげる。代わりに僕のことも許してほしいな。(答えなんか聞かなくてもわかる。泣きそうな時の癖がわかりやすいから。)(誰にも教えないけど!)






100828/はなさないでちょっとでいいからふあんにさせないでわすれないから

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