※成長



 無い肉をこそげ落とし、血を隅から隅まで、それこそ表面の隙間をも綺麗にできるほど、擦りすぎて磨耗(消耗品ではないが)(笑。)してしまうほど丹念に磨きあげられた頭蓋骨にそっと指を掠めた。コーちゃんみたいな処理を施したそれは、朽ちることがない。大事に大事に抱き締める。つめたい。
 やだ、とその手を後ろから、これまた冷たい手がとらえた。このままこいつの手も骨だけにしてやろうかと、短刀の刃をあてたが動く気配はない。骨になってもいいの。と。
 見た。平太の顔を。

「…まだ持ってる」

「うん。というかなんで捨てるって思うの」

「僕がいるのに」

 泣きそうに歪んだ顔は珍しく、なんだが気持ち悪い。死にそうな顔をしている平太は、気持ち悪い。前からそうだ、俺より大事なものがある以下略…うんたらかんたらとつらつら並べられていく言葉が、ぼやりとうかぶ瞳の色がうざったらしくてこそばゆい。
 喧しいと言ってもいいかもしれない。あんまりだるくてイラつかせるようなこと言うと、その辺に置いてある(壁にぶっささってたり転がってたりするけどまあ置く、と表現しておこう。)やつみたいになっちゃうよ。そこまで綺麗に剥がしたりえぐったりするのめんどうくさいから、せいぜい手抜きで終わりそうだけど。

「なんだろ、なんか…こう…やきもち?」

「そ」

 みっともない。骨なんかより僕を見て触って抱き締めて。骨を持ってる意味なんか特にないよ、ただこの人のしゃれこうべの形きれいでしょう。作法の先輩に負けず劣らず、長く伸びた髪を手繰り寄せながら平太は少し黙る。覚悟したように息をちょっとだけ飲んで、お茶いれて、と急須を指差した。これ色々入ってるけど、いいのかな。聞かずにお茶の用意をする。多分大丈夫だろう。飲み馴れているから。死んでも大丈夫だし。それこそほんとに僕が内臓かっさばいてあげる。のちにちゃんと解剖して隅から隅まで見てあげる。これなら嬉しいでしょう。ねえ。肉はミンチだけど。






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