「この頃怪我ばっかだね?」

 くるりと白い包帯を巻き終えた伊作が楽しそうに背中にもたれた。だからどうした、つれないなあ、何がだ、と適当に会話してると伊作がくすくすとあまあく笑う。(この頃あまり会えないからお前に会うために怪我してる、なんて、)(言えるか馬鹿。)こんなの言ったら死ねる。三回は恥ずか死ねる。

「優秀の留三郎が珍しいね、って」

「別に」

 そっけなく返すとまた伊作は嬉しそうに笑った。なにがそんなに嬉しいんだ。


「留三郎、らしいから」

「…伊作?」

 とろりと溶けそうに甘い声を出したからつい疑問系になると伊作は眠そうにくああと欠伸をした。かわいいんだかかわいくないんだか。
 背中にもたれる伊作を振り返り、腰を捕まえ自分のあぐらの上に持ってくる。と、伊作は体重を俺に預けふにゃりと笑った。無防備すぎて笑える。

「怪我は駄目だよ」

「ああ」

「留三郎は良くても僕が嫌だ」

「…わかった」

 ばれてるのか。顔を見下ろせばこちらの気持ちは露知らず、伊作は眠そうに目を擦った。ふ、とこちらを見たかと思うとにこりと微笑んで、

「とめ、」

「なんだ」

「あいしてる」

 だらけた俺の首元をたぐり寄せて首筋に軽く唇を触れさせてから伊作は糸が切れたように目を閉じた。(不意打ちすぎる)適わないねこいつには。ああもう今俺はゆでだこみたいに赤いんだろうなあ。






090428/眠たい夢に沈没

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