「留、さん…」

 とろけた顔で、伊作がかすれた声を出した。じっとりと責めた胸と太もも(プラス鎖骨と腹と背中、その他もろもろ)には鬱血のあとが大量に散らばっていて、すごいことになっている。直接的な部位には触れずさらりと流し、どうでもいいところばかり責められた伊作の目はもう虚ろで息を荒げたまま俺の首に絡み付いた。
 ふ、と息が耳にかかり、伊作は呼吸だけでいっぱいいっぱいなことがわかる。すぐそばにある耳を軽く食んでそのままこめかみと眉間にも唇を触れる。ほろりと溢れた涙を舐めとったあとに触るだけの接吻をした。甘い。気がする。いつものように細い腰に筋肉は薄く、脂肪なんてあるかないかわからないくらい。筋を指でたどったらくすぐったそうに伊作が顔をほころばせた。その顔にがつんと殴られたような衝撃を受けてつい、浮き出ている喉仏に噛みつく。潰さない程度。自分の痕がつく程度。

「もうほんとお前かわいい…ガチで…」

「あはは……嬉しくない」

「褒めてるんだけどな」

「ありがたく受け取っておくけどね」

 じゃれあうように指を絡めてから頬を擦りあわせたら、少しだけ荒れた肌はそれでもきめ細かく滑らかだった。






100706/ディアー

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