■十八歳になったよ
▼ナランチャ誕生祭2021
最初、ナランチャと誕生日が同じと言うことを知った時、すごく驚いたのを覚えている。
同じ日に生まれて、同じ日に歳を重ねて。まるで私達、双子みたいだなって。
誕生日が同じというのは他の恋人たちと比較して、どういうものなのだろうと思ったこともあったけど、深く考えるのはやめた。
私達にとっては、クリスマスが二回あるようなものだ。プレゼントを交換して、そして、誓い合う。
ずっと一緒にいようねって。
私達は出会ったばかりだったけど、去年の誕生日はそうだった。一緒に十七歳になって、おめでとうと言い合って、プレゼントを交換して、そして二人で笑って。
だから、今年もそれを、楽しみにしていたのに。
十八歳になる前に、彼はいなくなってしまった。
一つ歳を重ねて、十八歳になったのは、私だけだった。
「……」
お墓の前に立つ。彼の好きだった花を聞いておけばよかったと、ふと思った。
そして、そっと花を捧げる。去年あげたものは確か、腕時計だったけど。
――へへっ。ありがとな、ナマエ。
そう言ってくれた彼の声は、今でも思い出せる。
「一緒にいようって、一緒に歳を重ねようって、約束したのに」
だけど彼がいつかいなくなってしまうことを、考えたことがないわけではなかった。
ナランチャは、ギャングなんていう職業についているのだから。
だから、こういう約束をするのはいつだって私の方からだった。
困らせていたかもしれない。だけど、だけど。
「今年もナランチャと、一緒にいたかったな」
私がプレゼントを渡しても、彼からプレゼントが返ってくることはない。
私が十八歳になっても、彼が十八歳になることはない。
私がいつかおばあちゃんになったとしても、彼が歳を重ねておじいちゃんになることは、決してない。
ナランチャ・ギルガは、永遠の少年であり、私の永遠の恋人になってしまった。
今年のプレゼントは、綺麗な花束。
去年彼が私にくれたプレゼントは――なんだっけ?
――誕生日おめでとう、ナマエ。
そう言ってくれた彼の声は、今でも思い出せる。
だから今日の私は、彼に対して、ひとつひとつ言葉を投げかける。彼にも届いていたらいいなと、そう祈るように。
「ナランチャ、誕生日おめでとう。」
――ありがとな、ナマエ。
「あのね、ナランチャ。あなたは十七歳のままかもしれないけどね。私、十八歳になったよ」
――ああ、おめでとうナマエ。
「だから、だからね。あなたはそのまま、私のことを見守っていてね」
――……。
彼は私にどう返事をしてくれるか想像してみたけれど、結局うまく想像できなかった。
それでいい。私が何を想像しようと、彼は二度と、私に返事はしてくれない。
泣きそうになるのを必死でこらえて、踵を返そうとする。悲しくてつらくて、やりきれなくなりそうになりながら。
――あ。
ふと、何かの気配を感じると、ツバメがそこにいた。
しばらく見つめ合う。それはしばらくこちらを見たかと思うと、高らかに、歌うように鳴き声を上げた。
そして、それは空に飛び立つ。
「……」
少し、ほんの少しだけ気分が軽くなった気がして、私はほんの少し、笑みを浮かべた。
さよなら、私の恋人。
いつか私があなたの元へ飛んでいくその日まで、どうかお元気で。