「…とは言ったものの」
血なんて簡単にあげていいものじゃないと思うんだけどな。
でも「あげる」と言ったものは仕方ない。…いや、あげるとは言ってないけど。
それ以外にも、問題がある。
「…あの人に、なんて顔して会えばいいのかな」
付き合ってるわけじゃないけど、私には好きな人がいる。そもそも柳くんとああして放課後に会うのも、あの人のためなのだ。
柳くんと私が仲がいいのは知ってるみたいだけど、あんな現場を見られたら…!
「誤解されてしまう…!!」
普通に指先からじゃだめなのかな。首筋とか、なんてベタなんだ。
でもそんなこと言えない。またあの目に見つめられたら、本当におかしくなってしまいそう。
「もう、寝ようかな…」
小さなため息を一つ吐き、ベッドに横になる。
枕の下には、いつだったか柳くんに貰ったあの人の写真。
別にストーカーじゃない。
隠し撮りじゃないしね、うん。
あの人の夢が、見られるといいな。
平和な夜
まさか平和な日常も
今日までなんて
想像もしてなかった
20110315