『バンパイアだったら、血がいるんじゃない?』


なんて言った、数分前の私を殴りたい。
今、私は教室の柳くんの机の上に押しつけられてて、まるで押し倒されてるみたい。誰に、なんて簡単だ。だってこの場には、私と柳くんしかいないんだから。

柳くんは何かをするわけでもなく、私を押し倒したままじっと私を見ている。
いつも伏せられているように見える目が、すっと開いた。


「…や、なぎ…くん?」

「……名前の血を、俺にくれないか」


なんてことを言い出すんだろう。血ってそんな簡単にあげられるものだっけ。
どれくらいいるんだろうか。私の命に危険がないなら、あげてもいいかもしれない。
だって柳くんは今までずっと、私の相談に乗ってくれていたんだもの。お礼しなきゃって思ってたし、ちょうどいい。

あ、でも、


「吸血鬼に噛まれたら、吸血鬼になっちゃうって…本に書いてた気がするんだけど」


いつか見た本に、そんなことが書いてあった気がする。もう記憶も定かでないのは確かだけど、痛いのは嫌だし、まして吸血鬼にはなりたくない。


「…そうなったら、いいな」

「馬鹿なこと言わないで」

「すまない」


柳くんは謝りながら、私に顔を近づけてくる。こんなに近くでその整いすぎている顔を見たことはなかったからか、ドキ、と心臓が音を立てた。

しかし次の瞬間、視界から彼が消える。

しまった、と思ったときにはもう遅い。首筋に走る甘い痛みに体が跳ねた。
さっきの『すまない』は、これに対してだったのかな。


甘く、切なく
「っ、は…ぁ」
「…甘いな、名前の血は」



20100812
 ̄ ̄ ̄ ̄
久しぶりすぎてわけわからん
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