「柳、くん…」

「ずっと好きだったんだ。同じクラスになって、名前と話すことが増えて…お前の頑張りを一番近くで見ていたからな」


胸が痛いのが治らない。
きゅうって締め付けられて、鼓動も早い。このまま私死ぬんじゃないかなって思うくらい。


「嘘だ…よ、だってブン太くんが好きだって相談したときだって普通だったし…」

「…怖かったんだ。今の心地よい関係を壊してしまうのが。もし俺が自分の気持ちを伝えていたら、名前は俺と距離を置いていただろう?」

「そ、そうかもしれないけど…でも…」


信じられない。
思いが通じることがこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
散々回り道をしてしまってふらふらさ迷っていた気持ちに、ようやくピリオドが打てた気がした。


「お前が仁王にとられたと思ったとき、柄にも無く八つ当たりしてしまった。すまない」

「ううん、いいの、そんな…私がちゃんと言わなかったのもいけないと思うから」

「俺はさっきまで、仁王に脅されて丸井と付き合わなかったと思っていた。しかしお前は本当に好きな人が誰だかわかったと言った。俺のデータが正しければそれは、」

「柳くんだよ」


柳くんが名前を口にする前に柳くんに飛びついた。
柳くんは少し驚いていたけど、しっかりと私の体を受け止めてくれた。


「私が本当に好きなのは、柳くんだよ」


気づくのか遅かったと悔やんだときもあった。
柳くんに見捨てられたと思ったことも、私はただの餌なんじゃないかって悩んだことも。


「俺も、名前が好きだ」


でも、今こうして優しく抱きしめてくれる彼がいる。
その事実だけで今までのことが全て愛おしく思えた。



「名前の体も、血も、心も、全て俺のものだ」

「うん、あげる。全部柳くんにあげるよ」


それまで柳くんの胸に顔をうずめていたが、上を向いて彼の目を真っ直ぐに見た。
珍しく開いているその目を見て、なんだか嬉しくなる。


「ずっと一緒にいようね」


そう言って笑えば、返事の代わりに優しいキスがおりてきた。




愛し合えることの偉大さ



20140316
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