何も考えられない頭で、ただ黙って仁王くんについていく。
これで良かったんだ。そうやって自分に何度も言い聞かせた。今更、柳くんのことが好きでした、なんて言って信じてもらえるとも思ってない。それに、もし、お前のことはただの食料としか見ていない、なんて言われたら?

絶対立ち直れない。
だって今、突き放されて、こんなにも寂しい。


「…苗字?」

「…え?」

「考え事もええけど、構ってくれんとまーくん寂しいナリ」


ピヨ、なんて言う仁王くんに、きょとん、と効果音がつきそうなくらい驚いてしまった。
今なら漫画みたいに目が丸くなっていると思う。
仁王くんって、こんな冗談も言えるんだ…。


「…仁王くんって、面白いね」


ふふ、と笑えば、仁王くんもそれにつられて笑った。


「やっぱり、苗字は笑っとる方がええ」

「、…ありがと」


荒んでいた心が、ゆっくりと癒されていく。
出会い方さえ間違わなければ、いい友達になれたのにな。


「…でな、そこで真田が…」

「え、意外…!真田くんってそんなこと言うんだ」

「じゃろ?あん時は笑いを堪えるのに苦労したぜよ」


こんなに仁王くんと普通の話をしたのは初めてだった。
憂鬱に思っていた帰り道が思った以上に楽しくて、今だけは柳くんのことを忘れていられる気がした。




「、あれは…名前と、仁王…か?」


まさか、柳くんが偶然、私たちを見ていたなんて思いもせずに。





カミサマのいたずら


20121124
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