震えて、口がうまく動いてくれない。
違う…違う、違う!
「私は、柳くんのこと…!」
「俺のことなら心配するな」
「そうじゃない…、違う、の!」
必死だった。
ようやく自分の気持ちに気づいたのに、勘違いされたままなんて…そんなの…。
「私、本当に…っ」
「…同情なら、止めてくれ」
「!!」
声を失ってしまったみたいだった。
貴方が好きだと、言ってしまえたら。
そんな勝手が許されるなら。
「…もう俺に関わらない方がいい」
また、私を必要としてくれるのかな。
気がついたらもう放課後だった。
余程柳くんに言われたことがショックだったんだと改めて思い直した。もっと早く気持ちに気づいていれば、なんて。
『もしも』を考えたってどうしようもない。
そもそも、柳くんは私の血にしか興味がないんだから。
「…おい、苗字。何泣いてんだよ」
「え、っ…」
隣から聞こえた声に驚いて、慌てて声の主を見た。
「ブ、ブン太くん…」
「なあ、何で泣いてんだよ」
いつからいたの?とか。
声かけてくれたらよかったのに、とか。
言いたいことはたくさんあるのに、頭が追いつかない。
心臓が私のじゃないみたいにばくばく音をたてて動いてる。
「な、泣いてない、よ」
「ばか。泣いてるから言ってんだろ」
「…泣いて、ない」
ごしごしと目から溢れてくる液体を、制服の袖で拭った。
何で泣いてるかなんて私にもわからないのに、説明なんてできるわけもない。
「…あの、話って、なに?」
「あー…今、言っても平気?」
「…聞いてみないと、平気かどうかわからないよ」
それもそうだよな。そう言ってブン太くんは笑った。
ああこれだ。この笑顔に、ずっとずっと憧れてたんだ。
「あのさ、柳から聞いたんだけど…お前、俺のこと好きなんだろ?」
「俺もさ、お前のこと、いいなって思ってたっつーか…」
「好きだ、苗字のこと」
「…うそ、」
ああ神様。貴方って本当に。
いとおしくて、残酷で、
こんな状況でそんなこと言われたら
すがってしまいたくなる