ぱち、と効果音が出そうなほど、勢い良く目を開けた。
爽やかな目覚めだ。
真っ先に目に入るのは真っ白な天井。あ、でもちょっとシミが見える。
少し寝ぼけた頭でそんなことを考えながら起き上がり、辺りを見回した。
あのペテン師はいないらしい。
「良かった…」
独り言にしては大きすぎる声。
誰かが聞いていたならびっくりするかもしれない。
起きて、第一声が「良かった」なんて小説でもない限り、あまり聞かない。
「何が良かったんだ?」
「いや、仁王くんがいないから良かったなぁって……え?」
突然聞こえた声に、思わず返事をしてしまった。
しかも丁寧に答えてしまった…!
びっくりして声がした方を見れば、さっきは確かにいなかった柳くんが椅子に座ってこちらを見ていた。
「…さっきいなかったよね?」
「今来た」
「でも、音しなかったよ」
「俺は吸血鬼だからな」
吸血鬼って音もなく忍び寄れるんだ。
え、何それ怖い。
吸血鬼について新しい知識を得た私は、ひとつ、深いため息をついた。
寝ている間に飲まれたらどうしよう。
もしかしてこれは…貞操の危機…!?
「名前」
「はっ、ははははい」
すっかり自分の世界に入っていたものだから、柳くんに突然名前を呼ばれてどもってしまった。
柳くんはそれを笑うでもなく、呆れるでもなく、ただ真っ直ぐに私を見つめて。
「腹が減った」
空気を読んでください
「柳くんのKY」
「お前こそKYだ。もう昼だぞ」
「知るかそんなの!」
2011,5.3
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だんだん主がアホの子に…。