いつの間にか気を失っていたらしい私が目を覚ましたのは、学校の保健室だった。
どうやら柳くんが運んでくれたみたい。

時計を見ると二限目の真っ只中で、ここに先生はいない。

そうなると人間、欲が出てくるもので。


「…このままサボろう」


私は一限、そのままサボることにした。どうせ今から行っても…なんて甘い考えに流される。真田くんに見つかったら『たるんどる!』とかなんとか怒鳴られそうだな。


なんて。
そんなことを考えてたら、なんだか笑えてきた。
誰もいないこの保健室で笑うなんてただの変人みたいじゃないか。そう思って必死に笑いを堪える。


「随分楽しそうじゃのう、苗字」

「ひっ…」


後ろからかけられた声に、短い悲鳴をあげてしまった。いたのか、そこに。


「…仁王くん、いつからいたの?」

「二限目が始まってすぐ」

「……、」

「全部声に出とったよ」


やってしまった。
なんて恥ずかしい。しかも仁王くんはテニス部じゃないか…!


「…さ、真田くんには内緒に…」

「さぁて。どうしようかの」


何こいつ。
仁王くんは楽しそうに笑っている。

私はちっとも楽しくない…!!
怒ってる真田くんを想像するのは楽しいけど、私が怒られるのは嫌だ。
人間そんなもんだよ、うん。


「黙っておいてやってもかまわんが、ひとつ、条件がある」

「…条件?」


ここはもう何でもいいから大人しく条件を呑もう。


「お前さん、参謀と仲がいいじゃろう?」

「柳くんのこと?」


仲がいいにはいいけど…それが条件に関係あるのかな。
そう思って考えていると、とんでもない言葉が降ってきた。


「参謀、…吸血鬼、じゃろ」

「え…」



何でどうして
「ど、どこでそれを…!」
「やっぱりそうか」
「(くそっ、はめられた…!!)」



20110318
 ̄ ̄ ̄ ̄

仁王は柳を通じて知り合ったお友達設定。
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