嬉しそうに笑顔を振りまくあの赤髪を見ていると、無性に腹が立つ。
ブン太がそういう性格だということはわかっていたが、付き合い始めて初めてのこの日。

食べ物に目がないブン太は、きっと他の子たちからのチョコを貰うだろうと思っていた。

そしてそれが現実のものとなったのである。そのくせ、


「なぁ、俺のチョコは?」


なんて訊いてくるものだから絶対やらないことにした。


「そこにいっぱいあるでしょ」


そう冷たく言い放ち、中身がいっぱいになっている2つの紙袋を指差す。ちなみにもうひとつある紙袋には、可愛らしく箱を飾っていた包装紙や袋たちが無残な姿で入っている。ブン太が食べた後に残った、いわばゴミである。放課までにこの量を全部一人で食べたのかと思うと胸やけがしそうだ。


「…もしかして、妬いてんのかよぃ」

「違うわよ、馬鹿」


別にブン太は悪くないのに、口からは可愛くない言葉が飛び出す。本当は嫉妬しているのに。
ブン太に八つ当たりしてしまっている自分に軽く自己嫌悪に陥り、小さくため息をつく。


そうしてブン太の顔も見れずに俯いていると、ふいにポン、と頭を叩かれた。
私が驚いて顔を上げるとブン太が箱を差し出しているのが目に入った。


「何、コレ」

「俺から、お前に」

「…私、女なんだけど」

「こういうのも、ありだろぃ」


早く受け取れよ、と私に可愛くラッピングされた箱を押し付けながら言うブン太の顔は、夕日のせいか赤く染まっていた。



俺だってお前以上に
(お前からのチョコは特別なんだよ)
(愛してんだから)



20110214



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