愛しの彼にチョコを渡せないまま、一日が終わろうとしていた。
それというのも、普段は大人しい彼のファンが今日ばかりは我先にと彼を取り囲むのである。
そんな中に入れるわけもなく、結局渡せないまま放課後になってしまった。


「美里、」


突然名前を呼ばれて、悪いことをしていたわけでもないのにかなり驚いてしまった。
そしてその拍子にチョコが入った箱が手から滑り落ちる。


「れ、蓮二くん…」

「…それは、誰に渡すつもりだったんだ?」


つかつかとこちらに歩み寄ってくる蓮二くんはすごく格好良かったけど、なんだか少し怖い。


「もちろん、蓮二くんにだよ」

「…そうだろうな」


私がそう言えば、蓮二くんはにこりと笑ってくれた。
私はこの顔が好きなんだ。


「因みに、俺は誰からのチョコも受け取っていないぞ。だから…」



これ以上焦らすなよ
(俺が欲しいのは)
(お前からの愛の形)


20110214


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