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どこまで、いつまで逃げてきたのでしょうか。
うまく逃げ切れたのかすらわかりませんが、私はもう逃げられないでしょう。
追っ手が放った矢が、急所を外れているとはいえ、何本も私の体に深々と突き刺さっています。足は腫れ上がり、青く変色していました。名前様に怪我がないことが唯一の救いでした。
名前様を下ろした途端、力が抜けたかのようでした。倒れてしまってはと、近くの木に体を預けました。
「名前様…、私はここまでのようです。どうか、名前様だけでも…」
「っそんなこと、おっしゃらないでください…!共に生きると約束したではありませんか!」
名前様はご自分の着物を破り、私の足に巻いてくださりました。
そして、私を立ち上がらせ、肩を貸してくださったのです。
「どこまでも一緒です、蓮二様」
「…そうですね、名前様」
「もう、私は姫でも何でもありません。ただの女なのですから、普通にお話しください。蓮二様」
「…すまなかった、無理矢理…連れてきてしまって…」
「いいえ、名前は蓮二様と一緒にいられるのなら、他には何もいりません」
「…ありがとう。愛している、名前」
「はい…、名前も蓮二様を愛しております」
きっと明日には、俺と名前は罪人として世に知られることになるだろう。
それでもどこかで静かに、貧しくとも二人で幸せに暮らしていきたい。
そんな想いで、ゆっくりと歩を進めた。
「それ以来、二人を見たものはいないと言う」
「おじいさま!そのふたりはしあわせになったの?」
「ああ、とても幸せだったそうだ」
「へぇー、わたしもあってみたいな、そのおひめさまに!」
「…会えるさ、きっと」
「あらあら、ずいぶんと懐かしい昔話を聞かせていたんですね」
「ああ、どうしてもとせがまれてしまってな」
「蓮二様はお話が上手ですからね」
「褒めても何も出ないぞ、名前」
「おじいさま!おばあさま!おなかすいた!」
「ふふ、そろそろご飯にしましょうか」
「わーい!」
END....