最近、どうも名前の様子がおかしい。
話しかけても生返事で、ひどいときは話すら聞いてもらえない。
しかし「ならば仕方ないな」と自分に言い聞かせるように言ったところで誤魔化せるほど、俺の気持ちは生半可なものではない。

廊下を歩きながら名前の様子がおかしい原因を考えていたが、何一つ思い当たらない。
俺は、何か名前の気にくわないことでもしてしまったのだろうか。
こればかりは本人に聞かなければ…。
そんなことを考えていたせいか、知らない内にため息が出てしまっていたらしい。


「ため息なんてついちゃって、どうしたの?」


後ろから、声がした。
今一番会いたくて、話がしたい人物の声。
俺が勢いよく後ろを振り向けば、そこにいたのは見慣れた顔。

しかし、俺を驚かすには充分過ぎた。


「…何の真似だ、仁王」

「名前にふられて悲しそうな参謀を励ましてやろうかと」


怖い目で睨みなさんな、と言う仁王に反省している様子はなく、余計に俺の神経を逆撫でする。


「別に、ふられたわけではない」

「それはすまんかったのう。参謀ともあろう者がこんな場所でため息をつく理由が、他に思いつかんかったんじゃ」


嘘をつけ。
そう言えば目の前のペテン師はおかしそうに笑った。


「ま、頑張りんしゃい」

「お前に言われなくとも」


柄にもなく言い返せば、仁王は楽しそうに笑いながら俺の横を通って去っていった。

最後に、嫌な言葉を残して。



不安に揺れる金曜日
『そう言えば昨日、部室で真田と楽しそうに話しとった』


2010,11.9
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
タイトルは一週間になってますが、実際の時間は違います。
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