俺がいったい、何をしたというんだ。
「真理」
「……」
「真理、」
「……何?」
最近、真理はずっとこんな調子だ。
俺が神奈川に引っ越してきたときに隣に住んでいた同い年の真理と仲良くなるのに、時間はかからなかった。
それから同じ中学に入学し、真理はテニス部のマネージャーで、同じクラス。
今でもしょっちゅう互いの家を行き来する仲だ。
それが、ここ数日。
まともに口をきいてくれないというのは…どういうことなのだろうか。
生憎と俺には心当たりがない。
聞き出そうとしても、ずっとこんな調子だ。流石の俺もいい加減堪える。
「俺は、お前の気に障るようなことをしたのか?」
そう訊いた途端、きっ、と俺を睨みつける真理。正直怖くはないが、何かが胸に突き刺さる。
俺はこの感情の正体を知らない。
「言わないとわからないだろう」
「蓮二にはデータがあるじゃん、」
それもそうだ、と相変わらず不機嫌な真理を見て俺は思う。だが、それが出来ればこれほど苦労はしない。
わからないのだ、真理が。
いつもいつも、真理は俺のデータを上回る。…とは言っても、テストの点数は別だがな。
真理のデータをいくらとっても、わからないことのほうが多い。
「……蓮二でもわからないのに、私にわかるわけないでしょ」
「…意味が分からない」
俺にわからないのに?
俺は超能力が使えるわけでもなければ、もちろん読心術が使えるわけでもない。それなのに、分かれ、と言うほうが無茶ではないか?
真理のことは、真理が一番わかっているはずだが。
「…自分のことだろう、」
「自分のことだってわからないことあるよ阿呆」
何故俺はこんな仕打ちを受けなくてはならないんだ。俺が何をした。
いい加減俺も苛立ちが募ってくる。
「…俺に不満があるなら、そう言えばいいだろう」
「違うの。そんなんじゃなくて」
じゃあ、何なんだ。
そう怒鳴りたいのを抑えて、俺はまた訊く。
「なら、何だと言うんだ」
「……蓮二を見ると、苦しいの。ほかのことが手に着かないの。他の子と話してるのも嫌なの。……ねぇ、これ、何?」
本当にわからない、と言った表情で俺を見つめる真理。
そんな彼女に、俺までよくわからない感情に支配された。
ああ、そうか。
やっと俺は、この感情を理解した。
分かってみれば簡単なことだ。
だが、まだ言わない。言ってやらない。
俺はこの数日とてつもない不安に襲われたんだからな。
‐後、数ミリメートル‐
「お前は馬鹿だな(俺もだが、)」
「なっ!人がやっと決心して相談したのに…!蓮二の阿呆!」
(「何やっとるんじゃ」)
(「2人とも馬鹿だろぃ」)
20100520
柳さん視点はキツかった…。
本当に意味が分からん、話が。
最後のは柳と主を見ていた仁王とブン太。