※社会人設定
蓮二と同棲を始めて、早二年が過ぎた。
一昨年の今日、6月4日。
誕生日だった蓮二に欲しい物を訊けば
『真理、俺の傍にいてくれ』
と言われ、あれよあれよと言う間に同棲してしまった。
去年の誕生日には、
『お前が欲しい』
とストレートに言われ、プレゼントは私、なんて恥ずかしいことをさせられた。(蓮二との行為は普段からしているのだけれど)
そして、今日。
蓮二はまだ仕事から帰っていない。
私は夕ご飯を作りながら、今年は何を言われるのだろうかと考えていた。
ここ最近、蓮二の様子はどこかおかしかった。
どこかそわそわしているし、残業ばかりで二人でいる時間がかなり減ってしまっている。
もしかしたら私に愛想が尽きたんじゃ…、なんて考えも浮かんでくるわけで。
「…早く帰ってこい、ばか蓮二」
「誰が馬鹿だ」
後ろから聞こえた声に、びくっ、と大袈裟なくらいに肩が跳ねる。
恐る恐る振り向けば、愛しい愛しい蓮二が立っているわけだが…。
「…い、いつから…?」
「さっきからいたぞ」
「声かけてくれれば良かったのに!」
「何か深刻な顔で考え事をしているようだったからな」
だからって無言で背後に立たれるのも気分は良くない。いやむしろ、気分の問題じゃないと思う。
さっきの『馬鹿』発言をどうやって撤回しようか考えていると、蓮二が私との距離を縮めた。
「今日は、何の日かわかっているな?」
「…おめでとう、蓮二」
「ああ、ありがとう」
優しい笑みを浮かべ、私の頭を撫でる蓮二は、いつもの蓮二だった。
そんな蓮二に安心して、肩の力が抜ける。
愛想が尽きただなんて、考え過ぎかな。
「それで、今回は何が欲しいの?」
「ずっと考えていたんだが、ひとつしか浮かばなくてな」
「え、何?」
ひとつしか、って…普通ひとつじゃないの?いくつもお願いされてもいろいろと追いつかないし。
蓮二の言葉を待っていると、彼が軽く深呼吸しているのが目に入った。
「…、真理。お前が欲しいんだ」
「……それ、去年と一緒だよね?」
「違う、そうじゃない」
違うって…、なら、どういう意味?
答えがわからなかった私は、蓮二の答えを待ちながら、じっと彼を見つめた。
私の頬に、そっと蓮二の手が添えられた。
「お前のこれから先の人生を、俺に、くれないか」
ゆっくりと、確実に、伝えようとしているのがわかる。
いつも閉じられている蓮二の瞼が開かれて、そこから見える目から、目が離せない。
「それって、つまり…」
「拒否権は、ないぞ」
ふ、と笑う蓮二がスーツのポケットから取り出した物は、シンプルなシルバーリングだった。
プレゼント
本当は
ずっと、お前が欲しかった
HAPPY BIRTHDAY !!
Renji Yanagi
2011,06.04
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