卒業式を明日に控えた夜。
そろそろ床につこうと布団に潜るとタイミング良く真理から電話がかかってきた。
真理から電話をかけてくるなど珍しい。何かあったのか。そう思って急いで電話を取った。
しかしその電話は俺をどん底へ突き落とすこととなる。
たわいない会話をしていると、突然真理が押し黙った。
「弦一郎くん。私ね、県外の大学に行くの」
次に聞こえてきたのは、ずっと一緒にいた幼なじみから告げられた残酷な一言だった。
「…もう、決めたのか?」
「うん。立海大じゃ、私の学びたいことが出来ないから」
ごめんね、弦一郎くん。
最後に一言そう言って、真理は一方的に電話を切った。
心臓がバクバクと嫌な音を立てる。
ずっと大切に想ってきた。これからもずっと傍にいるのだと信じて疑わなかった。
俺は既に立海大へ進学することが決まっていたし、もう進路を変えることは不可能で。
真理は、いつから俺に隠していたのだろう。
何故もっと早く俺に告げなかったのだろう。
結局、その日は眠ることが出来なかった。
2011,3.6