「ねっ、蓮二くん。はい!」


真理から小さな箱が手渡された。
細長いその箱は俺の手にすっぽりと収まっている。


「…なんだこれは、」

「いいからいいから。開けてみて!」


意味が分からない。
いきなり箱を渡された俺は、顔には出さないが困惑している。迷惑でないが、何かあるのではないかと疑ってしまう。

だが、にっこりと微笑んでいる真理を見ると開けないわけにはいかないな、と思う。これが惚れた弱みというやつなのか。
それとも俺が変に疑いすぎているのだろうか。

頭で考えつつ、俺はゆっくりと箱を開けた。


「…シャーペン、か」

「え、蓮二でもシャーペンって言うんだ。『シャープペンシル』って言うと思ってた」

「俺を何だと思ってるんだ」


箱に入っていた、銀色のソレを出す。シンプルなデザインだが安っぽくはない。太すぎず細すぎず、持ちやすい。


「気に入った?」

「あぁ。…だが何故」

「『何故いきなりこれを俺に?』と蓮二は言う」


俺を真似たように目を閉じ、得意気に言った真理を持っていたノートの角で殴る。
ひどい、と言っていたが、すまないとは言えないぐらいイラッときた。


「痛い…ちょっとふざけただけなのに…。今日、誕生日でしょ?」

「…そうか、今日は俺の」


すっかり忘れていた。今日は俺の誕生日だ。
参謀ともあろうものが、とんだ失態だな。


「ありがとう、大切に使わせてもらう」


真理の頭にそっと手をやり、撫でる。真理はこれが好きだということは調査済みだ。


「抱きしめても、いいか?」

「……恥ずかしくなるから聞かないで」


それは肯定か?と意地悪く聞けば、頬をほんのりと赤らめて頷いた。
抱きしめる直前、そういえばここは通学路で、まだちらほら立海生がいることに気づいた。だがもうそんなことはどうでもいい。


「好きだ、真理」

「…私も」


俺の胸に顔を埋める真理に、なんとも言えない幸せを感じる。
今年は最高の誕生日だ。




小さな幸せ
「それにしても、何故シャーペンにしたんだ?」
「蓮二くんに毎日使ってもらえるから」
「……(きゅん)」




6月4日
 Happy birthday RENJI !


20100603
 ̄ ̄ ̄ ̄
最終的に何がしたかったのやら。
アクセサリーは合わないなぁと思ったので、シャーペン。けっきょく柳さんにシャーペンと言わせたかっただけ。←

なんか途中から柳さんじゃなくなったけど、兎にも角にも、お誕生日おめでとう柳さん!
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