【僕、加工で架空の有名人!】


僕はいつも教室でひとりだ。
そして放課後もそのまま家に帰る。

遊びも無し、デートも無し、塾も無し。

親が言うには
「馬鹿を塾にやらせるお金は無い」

18:30、僕は冷めたシチューをひとり温める。

はい!僕、16才。高校生。
インキャ。遊ぶ相手なんか当然居ない。
そして親も認めるバカ。

だけどスマホぐらいは使いこなせる。
馬鹿だけどぉ、若いから?あはっ

僕はネットの中に友達がいっぱいいる。

僕はここに自分で居場所を確保した。

初めて上げた自撮りは偶然の詐欺写メ。
通りすがりの誰かがイイネ!
びっくりした。
びっくりする程快感だった。

僕は化粧をがんばった。
イイネ!イイネ!リツイート!!

僕はアプリで美肌加工をした。
どんどん反応が増えていく……!

きっかけは1つのイイネ!
今となっては沢山のイイネ!を貰うことが
僕の唯一の楽しみ、生き甲斐。

今日はどんな自撮りをしようか?

朝御飯の時にはもう考えてる。
授業中も休み時間も。

家に帰ると僕は着替えて化粧。
ウィッグも被る。

今日の背景にはぬいぐるみを敷き詰めたよ。

1枚撮る。背景がいまいち。
2枚撮って3枚撮って4枚………

前髪とか顔の角度とか。

何十枚もの僕の写メ。アプリで加工。

僕は馬鹿だけど、
その辺の馬鹿なリア充よりはアプリを使いこなせる。

有名人だからね。

でも学校じゃ僕のことなんてちっとも話題にならない。

それは僕が架空の人物だから。
馬鹿なりに分かってる。

肌も目も鼻も口も、輪郭も加工。

リア充がやってるプリクラ詐欺なんて古いでしょ。

今日も僕はひたすらスマホのレンズと向き合ってアプリを弄る。

誰か僕と喋ろうよ。

架空の…僕とじゃなくて……

2016/10/26



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